OECD加盟国の農村地帯の水は汚染されている――その原因は現行の補助金

経済協力開発機構(OECD)の新しい報告書によれば、多くのOECD加盟国の農業地域の河川、湖沼、そして帯水層に見られる汚染は、飲料水の推奨制限値を超えていて、このような水を処理して飲めるようにするには毎年多額の費用がかかる恐れがある。

OECD加盟国全体で見れば1990~2004年の間に肥料や殺虫剤の使用量は減っているが、OECD加盟国(13カ国)の水質モニタリング地点では10カ所中1カ所以上の地点で硝酸塩、リン、あるいは殺虫剤の濃度が非常に高くなっている。

 

600頁もある報告書Environmental Performance of Agriculture in OECD Countries since 1990(1990年以降のOECD加盟国の農業の環境パフォーマンス)では、農業生産と農地、栄養物、殺虫剤、エネルギー、土壌、大気、生物多様性、農場管理などの一連の指標について検討が行われ、農業が加盟国の環境に与えてきた影響が比較されている。

主な検討結果は、次の通り。

  • 農業従事者への燃料補助金が、エネルギー効率を向上させることを阻害する要因になっている。
  • かんがいのための国庫補助も広く行なわれているが、これも水の効率的な使用を阻害している。
  • 殺虫剤の環境への影響は少なくなってきているが、使用禁止にしている加盟国もある殺虫剤のうちの古いものは今も環境中に存在している。
  • 化学肥料の使い方は効率的になってきたが、まだ河川や湖沼に流れ込む肥料が多く、富栄養化を起こして大きな問題である。
  • 農場管理のやり方を替えた場合に、土壌浸食率が下がったり、大気汚染が減ったりするなどの農業の環境パフォーマンスに改善が見られている。
  • 土地利用や農場における雇用が減ったにもかかわらず、肥料、殺虫剤、エネルギー、水といった農場に投入されるものが効率的に使われるようになって、OECDの農業生産量は1990年以降増加している。

OECDは、加盟国政府は、生産に結びつかない農場支援政策へ転換し、的を絞った対策の組み合わせを用いて農業における環境目標を追求する必要があると指摘している。

このような農場支援策には、野生生物の保護といった環境のためになることへの直接支払い、汚染を防ぐための規制や税の執行、農業従事者のための情報の改善、市場を通じたソリューションの検討などがある。また、栄養物や温室効果ガスによる汚染に対処するために売買できる許可や割当量を用いることも含まれる。

なお、上記報告書に関するさらなる情報は、以下のウェブサイトで見られる。
http://www.oecd.org/document/56/0,3343,en_2649_34487_40374392_1_1_1_1,00.html