米連邦EPAの技術者、水インフラの老朽化に対処する管理面、技術面での対策を要望

2008年5月20日に催された環境保護庁(EPA)のScience Forum 2008において、全米の上下水道インフラの老朽化を指摘し、管理面、技術面での革新的対策を求める声があいついだ。このなかで、EPA下水管理局の技術者Jim Wheelerは次のように述べた。

 

アメリカには、約5万5000のコミュニティ単位の上下水道システムがあり、これが国民の90%にサービスを提供している。これら上下水道システムには総延長60万マイルの汚水下水道と20万マイル以上の雨水下水道が含まれている。こうした上下水道インフラのなかにはつくられてから200年以上が経過しているものもあり、そこまで古くないものでも、修理や保守の資金不足、それに時代遅れの管理方法が原因で、しじゅう不具合が起きている。

たとえば、全米で1年間に約7万5000件の汚水下水道の越流が発生し、それにより汚染された水で約3700人が病気にかかっている。また、上水道本管の破裂は毎年24万件におよんでいる。

こうした問題の解決を阻む障害のひとつが資金不足で、アメリカは上水道インフラに毎年約100億ドル(約1兆500億円)を割いているものの、これは既存の上水道システムの修理と保守に必要とされる2068億ドル(約21兆6600億円)に遠くおよばない。下水道インフラについても同様に、国は毎年約130億ドル(約1兆3600億円)を支出しているが、既存のシステムの改善に必要な資金は2025億ドル(約21兆2500億円)とされている。

このような資金不足に対処する手段としては、管理方法の改善による寿命の延長とコストの最少化、リアルタイムのシステム・モニタリング、ライフサイクル・コストを見越した設備の購入、エネルギー効率のよい機器の使用、下水から回収できるアンモニアや3価リンの再利用などがある。いっぽう、地球温暖化による豪雨の増加や降雨パターンの変化などにも備える必要がある。

 

また、EPA研究開発局のエンジニアDan Murrayは、持続可能なインフラ計画のための研究プログラムをEPAがすでに開始していることを明らかにした。このプログラムは、下水の集水、および上水の集水と配水の分野での新技術の研究に重点を置いている。また、気候変動が上下水道におよぼす影響や、上下水道システムの性能を向上させ寿命を延ばすための費用効果性の高い革新的技術の研究も行なっている。

Science Forum 2008ではこのほか、全米の上下水道関連8団体の代表が、地球温暖化がアメリカの水資源や下水道システムにおよぼす「深刻な影響」を認識するよう、上下院の議員らに呼びかけを行なった。

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