ベトナムのメコン・デルタ――工場廃水、化学肥料、殺虫剤等で汚染され周辺都市にも影響

環境保護局の調査結果によると、メコン・デルタの河川水が汚染されてきたという。大腸菌(E.coli)濃度が許認可基準の2~5倍、BODとDODは許認可基準の1~3倍に達しており、このままでは、メコンの水環境に被害を及ぼすことになるとした。

 

メコン・デルタの環境が悪化

メコン・デルタに関して調査を行なっている米研究所によると、毎月メコン・デルタ畑では13億5700万から16億9600万トンまでの化学肥料が使用されているという。農薬については、詳細な統計上の数値がまだ作成されていないが、専門家によると、毎月畑には1万トン以上の農薬が撒布されているという。多数の農民は勝手に植物保護剤を使っている状況で、その結果、益虫や動物がいなくなり、殺虫剤に抵抗力を持った役に立たない昆虫が大量発生し殺虫剤で水面が汚染されているのである。河川の周辺に住んでいる住民も毎日生活廃棄物を河川等に投棄しているため、水質が悪化している。

 

西南部地方の環境保護局によると、1995年から今まで、毎年、同地域の人口が20万人増加してきた。1995年に20万ヘクタール(ha)であった海産物埋立場が、いまや70万haになっている。しかしながら、海産植物廃棄物はまだ効果的に処理されない現状である。塩水の地下水への浸出の増加、植物保護剤の大量使用に加え、生活廃棄物及び工業生産廃水による汚染も拡大し、土地の汚染状況は悪化している。

 

メコン・デルタの塩生森林(salt-marsh forest)には以前、239種の樹木、36種の動物、182種の鳥類、34種の爬虫類、6種の両性動物、そして260種の魚が生息していたが、今やわずか数十種しか残っているにすぎず、今後さらにそれらの種が減る傾向にある。カントー市の人の話では、最近、Hau川に生息していた400トンのCatfish(ナマズ)が突然一夜のうちに死んでしまったという。これは、20kmにわたって水環境が深刻に汚染されたことが原因であった。

 

都市汚染

西南部の環境保護局にもよると、メコン・デルタの大都市環境も深刻な汚染に直面している。代表的なのはカントー市である。例えば、Tra Noc工業団地ではガス、ガソリン、水海産、及び食べ物の生産に関する168件のプロジェクトが推進されているが、集中廃水処理・処分システムはまだ設置されていない。これらの製品の生産によって生じるほとんどの廃水(一日一万平方メートルの量)及び廃棄物は、未処理のまま直接に河川に流され、その結果、その河川の水は黒くなっている。典型的な例として、Sang Trangという河川の汚染濃度は許認可基準より6倍ぐらい高く、悪臭が漂っている。そのため、この工業団地周辺に住んでいる数千の市民は毎日悪臭を我慢しなければならない状態に陥っている。

 

カントー都市環境企業によると、都市化のスピードが速すぎるという。以前は市内の生活ゴミ発生量は一日当たり450平方メートルであったが、現在では一日あたり750平方メートルに増えてきているという。そのうち、収集運搬できる量は、実際のごみ発生量のほぼ60%ぐらいであり、残りのゴミは勝手に投棄されているという。それ以外に、工業団地の粉じん、けむり、騒音などが原因で、都市での環境はますます悪化している。An Giang、Vinh Long、Can Tho、Long An、Hau Giang及びCa Mau省などのメコン・デルタの水環境を測定した結果、BOD、SS、N-NH3及び大腸菌の濃度はいつも許認可基準より高いことが分かったという。