OECD、水資源管理やインフラ改善のための投資を要請

経済協力開発機構(OECD)の事務局長は2009年3月17日、世界の富める国に経済対策の資金の一部をより良い水資源管理と水や公衆衛生のためのインフラに投資することを検討するよう要請した。

2009年3月16~22日にトルコのイスタンブールで開催された第5回「世界水フォーラム(World Water Forum)」で、Angel Gurria事務局長は、「お粗末な統治と不十分な投資の結果、10億人の人々は、汚れていない飲料水を飲めないし、25億人の人々は、必要最小限の公衆衛生が得られない。また、2030年までに世界の人口のほぼ半分に相当する約39億人が「水(に関する)ストレス(下記参照)」のある地域に住むことになる。したがって、景気刺激のための支出は、短期的には経済再生を助けることと長期の成長をうながすことの両方に寄与すべきであるとしたOECDの最近の勧告のように、水は、総合的経済対策によって投資機会が提供され『2重の配当』が得られる(インフラのための)支出の最もよい実例である」と述べた。

同事務局長は、OECDの新しい報告書Managing Water for All: An OECD Perspective on Pricing and Financing(すべての人のために水を管理する:価格設定と資金供給に関するOECDの見通し)を紹介する際に、上記発言を行なった。

この報告書の要点は、次の通り。

 

世界は、人類と経済の発展を持続し、生態系を維持するために、水資源管理の改善を必要としている。
農業、環境面でのニーズなどの間で水の獲得競争が増えているので、水ストレスにさらされて暮らしている非常に多くの人々には、もっと効果的な総合的な水資源管理が、特に河川流域のレベルで、必要である。

水と公衆衛生がもたらす政策課題に取り組むために「セクター横断の考え方」をすることが必要であり、ソリューションと政策手段を提案する。

水ストレスを水需要が使うことができる水の供給量を上回る場合と定義する。

農業における水利用は、世界の水利用の70 %(OECD加盟国では約40 %)を占めるので、農業の改革が必要である。
農業における水利用に対する政府補助金は、水の無駄遣いと水ストレスの主な要因である。
農業と食物の国際貿易にとっての重要性とその生産と流通における水の使用を考えると、水の需要と供給が国境を越えて行なわれるという性質があるため総合的な水資源管理は国際的な重要性を持つ。
生態系を危険にさらさずに、経済的福祉と社会福祉を公平にできるだけ拡大するためには、水、土地および関連する資源の管理をよりよく調整するためのもっと効果的な政策が必要である。
そのような仕組みが成功している国では、強力な法的枠組みや戦略的な財政計画を持ち、農業従事者に水の使用料を負担させている。
極端な天候や気候変動がさらに水ストレスを悪化させている。従来からある技術や新しい技術を取り入れ、政策を改革し、農作業を水をもっと効果的に使うように変えれば、これらの影響を軽減することに役立つ。
水と公衆衛生に関する政策の目的を達成し、関連する経済的、社会的そして環境面でのメリットを実現するためには、OECD加盟国と途上国において現在よりもっと多くの投資が必要である。

老朽化した水関係インフラは、水の無駄遣いの主な原因である。
米国では、これからの20年間に、衛生と環境に関する基準を満たしながら、水インフラを現在提供されているサービスの水準に保つだけのために毎年230億ドル(約2兆3000億円)の投資が必要と推定されている。
また、途上国では、既存のインフラを維持するために毎年約540億ドル(約5兆4000億円)そして国連の水と公衆衛生のためのミレニアム開発目標を達成するためにさらに180億ドル(約1兆8000億円)を投資する必要がある。この目標は、2015年までにきれいな水や最低限の公衆衛生を利用できない人々を半減することを目指している。

このセクターへの援助は最近伸びたが、伸び続ける必要があり、民間部門が水関係への資金供給にもっと関与することが求められている。

水と公衆衛生の目標を達成し、ほかの資金源を活用するために、「究極の投資財源である税、関税および譲渡(英語では、tax、tariffおよびtransferなので、3Tと言われる)」の適切な組み合わせを見出すことが重要である。
関税のレベルをすべての品目について人為的に低く保つことは貧困層に悪影響を与える。したがって、適切に策定された関税は、費用回収が継続できるために欠かせないので、これを地元の状況を考慮して、透明な民主的なプロセスを通じて、また貧困層や影響を受けやすい人々が環境を傷めず手ごろな料金で水と公衆衛生のサービスを利用できることを確実にする政策を用いて定めるべきである。

 

なお、上記報告書に関するさらなる情報は、以下のウェブサイトで見られる。
http://www.oecd.org/document/16/0,3343,en_2649_34311_42289488_1_1_1_1,00.html