LLNL、淡水化用カーボン・ナノチューブ技術をPorifera Inc.に独占供与

ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL、カリフォルニア州Livermore)は2009年11月12日、淡水化や液体ベースの分離に応用できるカーボン・ナノチューブ技術の独占使用権をカリフォルニア州HaywardのPorifera Inc.に供与したことを明らかにした。

カーボン・ナノチューブは、炭素原子の環で筒状に構成された特殊な分子構造をもち、液体や気体は容易に通すが大きな分子は阻止するため、水から塩分を除去する安価な手段として注目されている。

 

今回の独占使用権獲得について、PoriferaのOlgica Bakajin最高技術責任者(CTO)はこう述べている。「この技術はきわめてエキサイティングなものだが、これを市場に出すのに、まさにうってつけの場所を得たといえる」

Bakajin CTOは、2000年にLLNLから特別研究員として招かれ、のちに、同じくLLNLの特別研究員だった化学者のAleksandr Noyとともに、カーボン・ナノチューブ・プロジェクトの主任サイエンティストになった。Poriferaへの技術の独占使用権の供与を決定したのは、LLNLの産業パートナーシップ・オフィスである。

 

Poriferaは、水の純化をはじめ、二酸化炭素固定化などのクリーン技術にも使える透過性、耐久性、および選択性にきわめてすぐれた膜の開発をおこなっている。この技術は、国家核安全保障局の傘下にあるLLNLにおいてなされたいくつかの発見にもとづいている。

この技術が誕生したのは、LLNLの研究所主導研究開発プログラムの資金と、科学技術管理部門の支援によるものであり、BakajinとNoyの研究ははじめから、淡水化の比較的安価なソリューションとしてカーボン・ナノチューブを利用することに重点を置いたものだった。最初の実証実験は、25セント硬貨サイズのシリコン・チップ上のナノチューブ膜を使っておこなわれた。

 

最近になって、BakajinとNoy、同じくLLNLの科学者Francesco Fornasiero、それにPoriferaの科学者Sangil KimとJennifer Klareで構成されるチームは、このナノチューブ膜のちがった用途を本格的に考えるようになった。

これについてNoyはこう述べている。「炭素固定化はつねにわれわれの頭の片隅にあった。カーボン・ナノチューブ膜のユニークな性質が、炭素固定化への応用にきわめて向いていると考えられるからだ」Bakajinも、カーボン・ナノチューブ膜が発電所の排気ガス中の窒素と二酸化炭素の分離に使えると言っている。窒素ガスと二酸化炭素とではカーボン・ナノチューブ膜を透過する率がちがうので、二酸化炭素の分離と固定化が可能になるというのである。二酸化炭素の固定化は、地球温暖化対策の重要戦略のひとつでもある。

Bakajinはさらにこう述べている。「われわれはこの可能性に、かなり以前から気がついていた。これを試みることに意味があるのは、カーボン・ナノチューブの細孔にユニークなナノフルイディックス的性質があるからだ。われわれは自分たちのアプローチがうまくいくと信じており、このテーマでLLNLと共同研究をするのをたのしみにしている」

 

LLNL、Porifera、およびカリフォルニア大学バークレー校は最近、エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)から、ナノチューブを利用した炭素回収技術の研究費用として100万ドル(約8900万円)を超える補助を受けた。

ARPA-Eの使命は世界のエネルギー事情を変えるような独創的かつ革新的なアプローチを開発し、同時に技術におけるアメリカの優位をさらに推し進めることにある。今回のARPA-Eによる補助は2年間にわたるものである。

これについてBakajinはこう述べている。「この種の補助金があたえられたのは、はじめてのことだ。こんどはわれわれが、これがその補助金に値するものであることを証明する番だ。ARPA-Eの成功は、われわれの肩にかかっている」

 

Poriferaはまた、他の研究パートナーの機関とともに、野外で使える携帯用小型自洗式淡水化システムの開発に国防総省高等研究計画局(DARPA)から330万ドル(約2億9000万円)の補助金を確保した。

Bakajinは最後にこう締め括っている。「これが現実にうまくいけば、市場の流れを変えるほどの技術だ。目標は、どんな水にも使え、汚染物質を取り除けるということだ。ほんとうにやりがいのあるテーマだし、この技術には大きなポテンシャルがある」

Poriferaは、カーボン・ナノチューブ膜技術の開発を目的として2008年に設立された。同社の研究開発チームには、この技術のオリジナルの発明者らが加わっている。

 

また、LLNLは、科学技術の開発によりアメリカの最重要課題に革新的なソリューションをもたらすために1952年に設立された国の安全保障の一翼を担う研究機関で、Lawrence Livermore National Security, LLCがエネルギー省国家核安全保障局の委託を受けて運営している。

タグ「」の記事:

2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル
2019年10月15日
チリの銅公社Cochilco、2018年度の銅鉱山での地表水、海水、再利用水の使用状況を発表
2019年7月27日
ラテンアメリカ淡水化及び水の再使用協会ALADYR、ペルーでの淡水化推進を強調
2019年7月24日
太陽光蒸気発生システムでほぼ100%の脱塩を実現――モナシュ大学
2019年6月20日
チリの銅鉱山会社AMSA、5億米ドルの淡水化プラントを建設すると発表