世界の水問題の専門家、世界中で水の価格を引き上げるよう求む

2010年4月23日に開かれた世界銀行の内々の会議やその数日前に発表された経済開発協力機構(OECD)の報告書の中で、水問題の専門家は、水は、古い上水道を修理し、新しい上水道を建設するために、もっと高い価格で評価されなければならない有限な資源であると述べた。

主要経済大国は、食料の減少や人口の増加の心配が高まっているので、世界中で水の価格を実質的に上げようと努めている。

10億人の人々が、汚染されていない水を得られていないことやその人数の倍を超える人々が、適切な衛生設備を持っていないことを示している公式の国連のデータがあるので、水の価格の値上げは、大きな論争を呼ぶだろうし、いくつかの国ではすでにそのようなことが起こっている。

しかし、水問題の専門家は、ほとんどの国で水に莫大な助成金を提供している限り、消費者、農業従事者、そして関係業界の水の無駄づかいの多い習慣を変えることはできないし、古い上水道を修理し、新しい上水道を建設するために必要な投資を集めることもできないと主張している。また、値上げをしても、工夫すれば貧困層に不利益をもたらさないようにできるとも述べている。

水道料金の値上げに対する障害は、長い間無料のあるいは非常に安い水を提供してきたことからくる「正当性」と水の必要な家庭から大きな利益を得ているインドの水売り業者が持っているような既得権である。

しかし、最大の懸念は、最貧困の家庭への影響である。かれらは、資金不足の水道事業者がかれらに水をまったく供給していなかったり、そのサービスが悪すぎるので、かれらがもっと高価な水売り業者に頼らなければならなかったりするので、このような水道事業者の悪いサービスによってもっとも苦しんでいるということが分かっている。

このような水価格の値上げに対する抵抗に対処するために、次のような方策が示されている。

  1. 南アフリカで行なわれているように、飲料水、料理、洗濯などに使われる必要最小限の水を守るために、こういうことに使われる水の料金を非常に安くしたり、無料にしたりする段階的な価格設定が使える場合がある。
  2. 食品の価格は、水道料金と同じように高くなってはいけないが、必要な水がいままでより少なくてよい新しい種子に替えたり、これまでより水が少なくても育つ食材に替えたりすることでその価格がそれほど高くならないようにできる可能性がある。
  3. 上水道事業を政府の役目としないという考え方もある。

(3) の一例を挙げる。
フィリピンのマニラでは、フィリピン政府が上下水道を管理していたときは、投資が不足しているために、上下水道のサービスが悪くなり、顧客がそれに不満なので、水道料金の値上げをできず、また顧客が水道料金を支払わないので、キャッシュフローが少なくなって、政府がサービスを向上させることができないというような悪循環に陥っていた。

1997年にフィリピン政府が「国家水危機法(National Water Crisis Act)」を可決したときに、マニラの上下水道事業を引き継いだManila Waterは、水道料金を1m3当たり4.5ペソから30ペソに引き上げた。当初は抵抗があったが、この会社が最貧困の無断居住者地区を含めて導管を太いものに替え、漏水を大幅に減らし、水圧と水質を改善した後、それまでの状況は一変した。現在は、最貧困家庭の水道料金は、かれらが飲料水を買っていたときと比べると、10分の1未満となり、料金を支払っていない人はいない。