フランスの水セクターで複数の新たな動き――ただし市場主導企業は依然としてVeoliaとSuezの2社

フランスにおける水ビジネスならびに環境サービス部門では依然、Veolia EnvironmentとSuez Environmentの二大コンツェルンによる寡占状態が続いている。

Veolia Environmentの2009年の売上げは前年比3.4%減の345億ユーロ(約4兆4000億円)。水部門は同コンツェルンの主要事業となっており、事業全体の約3分の1を占めている。現在、同社が関心を寄せているのは、米国シリコンバレーで創出されているCleantechと呼ばれる新産業とのパートナーシップ提携だ。可能な提携先としてKleiner Perkins社、Koshla Ventures社などの名が挙がっているが、最初のパートナーとして白羽の矢が立ったのは、ナノ粒子を利用した膜技術による海水淡水化プロセスを開発したNanoH2O社である。Veoliaはイスラエルのアシュケロン海水淡水化プラントをはじめ、この分野でも積極的に事業を展開している。

Veoliaに続き世界水セクター第二位のSuez Environmentでも、昨年の売上げは前年比わずか0.5%減の123億ユーロ(約1兆5700億円)と、経済危機に際しても底力を見せた。最近ではスペイン水市場最大手Agbar社を傘下におさめている。

国内3位の地位を占めるのはSAUR社。しかし、売上高15億ユーロ(約1,900億円)と上位2社には大きく水をあけられている。

なお、フランス国内の水セクターでは現在、次のような新たな動きが見られる。

イル=ド=フランス地域における水供給事業コンセッション

1962年以来、Veolia(当時の社名はGenerale des Eaux)が上下水道サービス事業を請け負っているイル=ド=フランス地域において、今春、新たに水供給事業コンセッション契約が予定されている。イル=ド=フランス地域圏は域内144のコミューン(自治体)、上下水サービス対象人口400万、3億7600万ユーロ(約478億円)の売上げ(2008年実績)を擁するヨーロッパ最大級の水マーケットである。新契約の期間は10年(2年間延長可能)。本事業のコンセッショナーとして、Veolia EauとSuez Environmentのほかに、独Remondis社(水・リサイクル業)も仏Derichebourg社(リサイクル業) と共同で名乗りを上げていた。しかし、Remondis-Derichebourgによる提案がイル=ド=フランス水道組合(Sedif)によって却下され、結局VeoliaとSuezの2社のみが選考に残る形となっている。

Loire-Bretagne地域新マスタープラン

Loire(ロワール川)-Bretagne地域では、2009年末、水管理に関する新マスタープランSDAGE(Schéma Directeur d’Aménagement et de Gestion des Eaux)を公表した。同プランは、2015年までに管内の河川水量の61%において生態学的に良好と判断されるレベルまで水質を向上する目標を掲げている(現在は25%)。インフラの近代化、拡散汚染やノンポイント汚染(NPS)浄化、景観の復元、ダム保全といった各種対策に必要な投資総額は60億ユーロ(約7,600 億円)を超えると見られている。