水道水の水質向上を求めて

水道水、そしてシャワー、製氷機、水用ボトルなど、のための戦いが進行中である。

製造業者は、飲んだり水浴びしたりすることからより若々しい肌までありとあらゆることを期待できるとして家庭で水をろ過する数々の新製品を売り込んでいる。

「1週間で、もっとしなやかな肌と髪」を売り込んでいるシャワー用ろ過器は、今テキサス州フォートワースに本拠のあるSun Water Systems Inc.のAquasanaブランドの最大の売れ筋商品である。フロリダ州ゲーンズビルにあるWellness Enterprises LLCは、2009年夏に特に塩素と鉛を除去できると言ってろ過器をストローに組み込んだ携帯水用ボトルを発売した。それから、カリフォルニア州サンルイスオビスポのAtmospheric Water Systems Inc.は最近、水道水を完全に無視して、空気中の水分を集めて、多段ろ過プロセスを通らせて飲料水を作り出す、1,595ドル(約14万円)の除湿機/浄化装置を発表した。

景気の停滞が、消費者の水道水に対する関心を呼び覚ましている。Beverage Marketing Corp.によれば、ペットボトル入り飲料水の平均の1人当たりの消費量は、2009年には2008と比べておよそ3.5 %下がった。「われわれにとって形勢を一変させたのは、環境配慮の観点から行なわれたペットボトル入り飲料水を非難する大掛かりな広報活動であり、ついで経済が停滞したので、人々はコストを削減する方法を求めている」とZero Technologies LLC.のDoug Kellam最高責任者は述べている。この会社では、検出可能な溶存固形物(鉱物、塩類、金属)を100 %取り除くことを約束し、このことを証明するためのメーターが付いた水差しを製造している。

しかしながら、多くの消費者は、未処理の水道水を望んでいない。2009年に発表されたギャラップ世論調査によれば、飲料水の汚染がアメリカ人の第1位の環境への懸念である。多くの人が、飲料水で検出されることがあるヒ素、塩素、調合薬といった汚染物質と関係している可能性のあるがんを含む疾病のリスクについて心配している。

半年前、Joe Ulland氏は、水を飲むときの習慣を変えた。水をきれいなコップに注いだ時にいつもコップのなかに浮かんでいるものを見てしまうことになる結果にうんざりして、ミネソタ州レークビルに住んでいる40歳の3人の子どもの父親は、家庭用ろ過浄水システムに投資して、waterfilters.netから製品を購入した。

この製品は、75ドル(約6,800円)で、台所の流しの下にある水道管に接続されていて、飲料水や冷蔵庫の製氷機で使われている水をろ過している。彼の子どもたちは今、スポーツの練習に出かける前、店で買ったペットボトル入り飲料水を持つ代わりに、台所の流しで再利用できる瓶にろ過された水を入れている。Ulland氏は、「この方が安いからより経済的だし、地球のためにもいいことだ」と言う。

処理システムを買おうとすると、分かりにくいことがある。それは、水道水を、家庭に入ってきた時点から、浄化する住宅全体用ろ過装置からシャワー用、水差し用、蛇口用などのフィルターといった「水を使う場所専用(point-of-use)」の機器まで、さまざまなシステムが住宅内のさまざまな場所でさまざまな汚染物質に対応しているからである。

処理技術もさまざまである。炭素フィルターは、もっとも普及しているが、通常塩素を減らし、味やにおいをよくし、水銀、銅、鉛のようなものも除ける場合がある。このほかのシステムとしては、炭素では必ずしもとらえられないいくつかの汚染物質を取り除ける半透膜を用いた逆浸透を採用したものがある。紫外光処理は、細菌が繁殖するのを防ぐのに役立つ。堆積物フィルターは、一般的には、砂、土、さびのようなより大きな粒子をとらえるものである。

「消費者は、複雑なことに単純な答えを期待している」とNSF International Inc.のTom Bruursema飲料水処理システム担当マネジャーは言う。この会社は、水処理製品について宣伝されていることについて認証する非営利組織である。これ以外の認証機関には、Water Quality AssociationUnderwriters Laboratories Inc.がある。

ペットボトル入り飲料水業界としては、ろ過業界のマーケティングの方針を受け入れてはいない。2010年2月、「国際ペットボトル入り飲料水協会(International Bottled Water Association)」は、この8年間に普通の1人分のペットボトル飲料水の容器は、ほぼ33 %細くなったという分析結果を発表した。「ペットボトル入り飲料水の安全性、利便性、そして健康によいこととあいまって、『ペットボトル入り飲料水の全体』は、消費者が誇りに思えるものである」と同協会のJoseph Doss最高責任者は述べた。

そうは言うものの、市場調査会社Mintel International Group Ltd.によれば、家庭用水ろ過製品の売上高は、2010年から2013年の間に約18 %、年間24億7000万ドル(約2200億円)から29億1000万ドル(約2600億円)に、成長すると予想されている。CulliganGEPentekのようなよく知られているブランドのさまざまなフィルター製品を売っているwaterfilters.netの売上高は、2009年には2008年の370万ドル(約3億3000万円)から550万ドル(約5億円)に上昇した。

新しいデザインは1つの要素である。ニューヨークに本拠のあるGreen Depotは、650ドル(約6万円)する巨大な磁器の卵と似た「フィルター処理水サーバー(filtered dispenser)」であるAquaovo Ovopurを売っている。また、Design Within Reachは、「無臭の水」のために日本海の海岸の石と備長炭を入れたほっそりした85ドル(約7,700円)のガラス容器を市場に出している。さらに、Wellnessは、30ドル(約2.700円)の塩素除去用の棒状の器具を盛んに売り込んでいる。量販企業さえもこのような動きに加わることを切望している。たとえば、Procter & Gamble Co.のPURブランドは、蛇口にワンタッチで取り付けることができることをうたっているフィルターを量産している。そして2010年3月、Clorox Co.のBritaブランドは、その製品に「Bella」を加えた。これは、「お客の正餐用のテーブルに置くのにふさわしい」と言う流線型の水差しである。

それでも、フィルター業界は、マーケティングの困難に直面している。まず、フィルターの交換品のコスト(そして、それを買うことを覚えているという面倒)があり、そして古くなったカートリッジをどうするかという環境問題がある。BritaZero Technologiesはともに、フィルターのリサイクル・プログラムを提供しているが、消費者はあまりこれを利用していない。

環境保護庁(EPA)は、ほとんどの人々は飲料水を安全にするために家庭で飲料水を処理する必要はないと言う。しかし、同庁は、家庭用水処理設備は、水の味をよくする可能性があるし、幼児、高齢者あるいは免疫不全のある人といった「飲料水媒介の病気の影響を受けやすい」人々には安全性を高めることになると補足している。EPAは、最終的に上水道システムに入る可能性のある微生物から除草剤や工業・化学工場からの排出物までの約90種の汚染物質に基準を設定している。

同庁は、それぞれの汚染物質に最大許容量を定めているので、上水道事業者は、水を処理して、検出された物質について顧客に毎年報告書を発表することを義務付けられている。(個人の井戸の水を飲んでいる人は、自分の責任であるが。)

家庭用処理機器は、そのような汚染物質をさらに減らす可能性がある。さらに、EPAは米国で使われている約15,000種の化学物質のごく一部にすぎない物質に飲料水基準を設定している。2009年12月、非営利の環境ワーキング・グループ(EWG)は、上水道事業者が行なった2000万の水道水の水質試験の3年間にわたった分析の結果を発表し、全国で供給されている水のなかに約202種の現在規制されていない化学物質を見出した。これには、ロケット燃料の成分である過塩素酸塩(パークロレート)やガソリン添加剤のMTBEが含まれている。銅や鉛といったほかの汚染物質は、住宅所有者の自宅のパイプの腐食や真ちゅうやクロムでめっきされた蛇口や取り付け具の浸出を通じて持ち込まれる可能性がある。いくつかの汚染物質を検出できる約10ドル(約900円)からあるDIY試験キットがあるが、徹底的な分析には、試料を収集し、民間研究機関に送る専門家が必要である。

「ほとんどすべての場合、上水道事業者は、連邦政府の基準を遵守しているが、そうだからといってその水道水を飲んでも必ず安全だと言い切れない」とEWGの調査担当のJane Houlihan上席副社長は述べている。

EPAは、調合剤や殺菌副生物など飲料水に含まれていて現在規制されていない100種を超える汚染物質を規制する可能性を知るために、そのような物質の健康への影響を2013年まで検討している。

NSF InternationalのBruursema氏とHoulihan氏は、味が一番の関心事である場合は、おそらく炭素フィルターを使ったあまり高価ではない水差し、冷蔵庫、あるいは蛇口の取り付け具で間に合うと言う。かれらは、保護をもっとも大事だと思っている人々には、主な飲料水の出口、通常は台所の流し、で、たとえば、炭素フィルターと逆浸透装置の組み合わせのように、全住宅用のろ過システムと水を使う場所専用のモデルとを組み合わせるというアプローチに賛成する。シャワー・フィルターは、経皮や吸入による汚染を気にしている人々にはさらなる安心感を与えることができる可能性がある。

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