Suez Environment、40%の増益

気候変動と人口増で、オーストラリア、アメリカの一部、中国、およびインドにおける水不足の問題が急速に深刻化するのは避けられない情勢だ――世界第2の上下水道ユーティリティ、Suez Environment(本社:パリ)のJean-Louis Chaussade CEOは2011年2月9日、記者会見でこのように語り、さらにこうつづけた。「地方の当局は、水の需給が逼迫していることについて、ほとんど理解していない。しかし、都市が得られる水はすこしずつ少なくなってきている」

水不足がビジネス・チャンス

Chaussade CEOのこの談話は、Suezが2010年の良好な営業実績を公表した際のものだ。2010年、Suezの純利益は40%伸びて5億6500万ユーロ(約652億円)に、売上は13%伸びて138億7000万ユーロ(約1兆6000億円)に達した。さらに、2011年には、売上が5%伸び、EBITDA(利子、税、減価償却、債務償還前の利益)が10%伸びるとSuezは予測している。こうした強気の読みができるのは、世界中で自治体相手のビジネスを展開しているSuezにとって、水不足は大きなビジネス・チャンスを意味しているからだ。

Suezをはじめとする水道ユーティリティ各社は、世界中で先細りしつつある水資源をより有効に使うための技術に、研究開発資金をますます集中させる傾向にある。たとえばSuezは、複合音響システムで水道管をモニターし、漏洩を検知する方法を開発した。同社はまた、水質改善のためのさまざまなソリューションも提供している。いっぽう、サウジアラビアの首都リヤドでは、Suez Environmentのライバルである同じくフランスのVeolia Environmentが市の水道網を一手に引き受け、1日24時間、飲料水を住民に供給している。

世界各地のビジネスの成果

Suezは、4年連続で渇水の危機にみまわれているカリフォルニアにも、大きなビジネス・チャンスを見ている。Chaussade CEOは、カリフォルニアの水不足は過剰な汲み上げによってさらに悪化し、淡水化プラントの必要性がますます差し迫ったものになると述べている。カリフォルニア州では現在、1基の淡水化プラントが建設中で、2011年内には完成し、およそ30万人に水を供給することになっている。

Suez Environmentは10年前から、ロサンゼルス郡のWest Basin浄水プラントの運転をつづけている。このプラントでは、工業用および農業用に再利用するために水を浄水処理している。Suezは同様のプラントをさらに建設すべく、カリフォルニア州当局と話を進めているが、具体的なことはまだ何も決まっていない。

オーストラリアでは、Suezはパースで淡水化プラントを運転しており、現在、メルボルンの近くでもうひとつのプラントを建設中である。オーストラリアは「水問題に関しては世界の実験室だ」とChaussade CEOはいう。オーストラリアにおけるSuezの売上は2010年に7億8600万ユーロ(約909億円)にまで伸び、2011年には10億ユーロ(約1160億円)を超えると見られている。Chaussade CEOは、これはオーストラリアの平均雨量が過去20年間減少をつづけてきたことの反映で、今後、ますます多くの都市が淡水化に向かうと述べている。

スペインのユーティリティ、Aguas de Barcelona(AgBAR)の買収や、廃棄物の増加、廃棄物収集・処理料金の上昇も、Suezの2010年の利益が伸びた原因として挙げることができる。さらに、廃棄物から回収・リサイクルした原材料を売却しているSuezにとって、原材料価格の上昇も業績のプラス要因となっている。将来のこととして、Chaussade CEOは2009年のAgBAR買収につづく大規模な企業買収は考えていないとしているが、規模の比較的小さな買収については否定していない。

これに関してChaussade CEOは、「過大な投資は避けたい。われわれのビジネスにとってきわめて厳しいことになるからだ」と述べている。

なお、Suez Environmentの2010年末の負債総額は75億3000万ユーロ(約8700億円)で、これは6ヵ月前よりも9%減少している。