VA Tech Wabag、株式を公開

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インドとオーストリアに本社をもつ国際水ビジネス企業、VA Tech Wabag(VA Tech)が株式公開の手続にはいった。同社の株の長期的な保有を望む投資家は、購入を考えてよいだろう。VA Techは大きな将来性のある水処理ビジネスにゆるぎない地位を築いており、途上国における事業基盤も強固で、無借金の堅実な財務状況にあるからだ。

VA Techは、オーストリアのVA Tech Wabagの子会社だったVA Tech Indiaの時代、いくつかの著名なプライベート・エクィティ・ファームの支援をうけて親会社である当時のVA Tech Wabagを買収するという行動に出たことで、水ビジネスの世界ではユニークな存在として知られている。この買収によりVA Techは、主要な市場にすでに確立されている拠点を手に入れたばかりでなく、オーストリアのWabagのもつ157件の特許権も手中におさめることができた。

投資家は、VA Techを水処理分野におけるユニークな企業と考えてよく、政府の規制や、節水および水リサイクルの必要性によって生じる大きなビジネス・チャンスがそこにはある。

株式公開にあたって提示されている1230~1310ルピー(約2260~2400円)という価格帯は、2012年度の予想1株利益の12~13倍にあたり、これは値ごろといえる。2010年度の23~25という株価収益率は、インフラ事業を営む他の企業と比べて高いと思われるかもしれないが、VA Techがより技術志向の企業であり、ブリック&モルタル型の事業モデルへの依存度が低いことを考えると、この比較はあまり意味がないかもしれない。それよりも、VA TechがインフラBOTデベロッパーと同様の無形資産保有企業であることから、株価純資産倍率を比較の尺度としたほうがよいかもしれない。VA Techの株価純資産倍率は2.4~2.6倍であり、これはインフラ事業を営む他の企業とそれほど違わない。

VA Techは(ヨーロッパにおける事業コストが高いことから)外国子会社の収益率の改善をはかる途上にあり、投資家は、それによる利益をじゅうぶんに享受するには株を少なくとも2年ないし3年は保有していたほうがよいだろう。

株式公開の概要

VA Techの株式公開の概要は以下のとおりである。
価格帯(ルピー) 1230~1310
公開総額(1000万ルピー) 451~472
時価総額(1000万ルピー) 1300~1380
申込受付開始日 2010年9月22日
申込受付終了日 2010年9月27日
主幹事会社 Enam、IDFC

VA Techは、汚水や廃水の処理、プロセス用や飲用の浄水、淡水化、水再利用などの水エンジニアリング・ソリューションを提供している。今回の株式公開で同社は、新株発行により12億5000万ルピー(約22億9000万円)、プライベート・エクィティ・ファームの持分の一部売却により32億6000万~34億7000万ルピー(約60億~63億7000万円)を得たいとしている。

この株式公開で得た資金を、VA Techは運転資金に振り向ける計画で、手持ち(3月現在)の20億ルピー(約37億円)を超える現金は将来の企業買収に充てる考えである。株式公開の提示価格帯で計算すると、発行済み株式の時価総額は130億~138億ルピー(約238億~253億円)となり、株主資本総額としてはきわめて低い。

世界企業へ

VA Tech(当時はVA Tech India)は、水ソリューション企業の大手で自社の親会社であったオーストリアの当時のVA Tech Wabag(Wabag Austria)を2007年にSiemensから買収し、一躍世界の舞台に踊り出た。この買収により、VA Techは主要な水市場への足がかりを得ることができた。Wabag Austriaの技術を手にしたVA Techは、その技術をインドや国外のさまざまなプロジェクトに活用しはじめた。

VA Techは子会社を通じて、中東や北アフリカの主要市場で事業を展開している。これらは世界でも最も水が不足している地域で、海水淡水化や水再利用の技術に頼らざるをえない。これらの主要市場のほかに、VA Techはヨーロッパ、中国、および東南アジアの一部にも食い込んでおり、それら地域におけるプロジェクトの実績が、将来のプロジェクトの技術の確かさを保証するものとなっている。こうした広範な地域で大きく事業を展開しているのは、ほかにSuez EnvironmentやVeolia Waterなど数社しかない。多くの技術や特許をもつVA Techは、これらの市場でビジネス・チャンスをつかむ恰好の位置にいるといえる。

VA Techのこれまでの事業は、自治体向け、産業向け、運転(運転・保守)、および国際ビジネスに分けることができる。水処理プロジェクトの大部分が地方政府によるものであることから、VA Techの278億ルピー(約512億円)の受注残(1年半ないし2年で完了)の88%近くは国内外の自治体からのもの、残りは産業顧客からの受注である。自治体発注のプロジェクトの契約にはたいてい価格増減条項があり、これによってVA Techはコストの変動からある程度守られている。

高利幅をめざして

水のプロジェクトは通常、利幅が大きいが、VA Techは実際の工事を地元の業者に下請けに出しているため、それを文字通りに利益としてフルに活用できるとはかぎらない。また、高い設計能力や技術を売りにしている企業として、研究開発への投資に力を注ぐことは、資金をプロジェクトの実施のために凍結しておくよりも正しい選択といえるだろう。だが、こうした事情にもかかわらず、VA Techはこれまで単独ベースでは12%以上の営業利益率を維持してきた。ただし、連結ベースでの営業利益率は9.4%(2010年度)と、やや低めになっている。

インド企業がヨーロッパの企業を買収する際にありがちなことだが、親会社に比べて外国子会社は営業コストが高く、利幅があまり魅力的でないことが多い。こうしたことを避けるため、VA Techは事業を分散化し、主要な途上国に現地オフィスを設けてひとつの中央オフィスへの集中化を避けるなどの改革をおこなってきた。これによる成果は明白で、連結ベースの営業利益率は、親会社買収当時の2008年度の4.8%から5%ちかく上昇している。この数字は、今後アフリカや西アジアなどからの受注が増えるにつれ、さらによくなることが予想される。VA Techの外国からの受注は現在同社の総受注額の約30%にすぎず、営業利益率が伸びる余地は大きい。

VA Techは、プロジェクトの契約による売上のほかにも、運転・保守部門の業績の伸びも期待できそうだ。運転・保守部門は、その売上がかつては総売上の7%にすぎなかったが、これが2010年度には17%を占めるまでになった。さらに将来は、チェンナイにおける淡水化プラントなどのBOOTプロジェクトが増える見込みで、これが売上の安定化につながることはまちがいなさそうだ。淡水化プラントのBOOTプロジェクトの利幅もまた高い傾向にある。こうしたプロジェクトでは、料金が造水量に対して固定されているからである。

親会社を買収してからのこの2年間で、VA Techの売上は年率41%の勢いで伸びて2010年度は123億3000万ルピー(約227億1000万円)に達し、この間、利益は年平均成長率で202%伸びて4億9000万ルピー(約9億円)に達した。2010年度の利益は税の全額納付のために減ったものの、同社は現在、所得税法801A条にもとづく還付請求を検討しているところである。なお、VA Techは依然としてほぼ無借金の経営をつづけている。

2010年12月3日、住友商事は、VA Tech Wabagと提携を結んだことを発表している。住友商事のプレスリリースは、以下URLよりアクセスできる。
http://www.sumitomocorp.co.jp/news/2010/20101203_110000.html

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