ハンガリーのアルミ製錬工場から大量の有害廃棄物が流出――貯蔵施設の堤防決壊で

2010年10月4日、ハンガリー西部にあるAjka Timföldgyárアルミ製錬工場で、貯蔵施設の堤防が決壊し、大量の有害廃棄物が流出するという、同国史上最大の産業事故が発生した。これにより、およそ70万立方メートルの有毒な泥土が近くの町に流れ込み、7つの村が壊滅したほか、9人が死亡(10月14日時点)し、100人以上が負傷した。

町に流れ込んだ赤い泥土は、アルミニウムの製造過程で発生する副産物で、危険な腐食性物質である。このため、人々はやけどを負い、自然が破壊された。今回の事故は、Ajka地域の経済と生態系に計り知れない損害をもたらした。

ハンガリーの災害管理当局とハンガリー軍は、被害を受けた村々で、直ちに救助作業を開始した。スロバキアも、救急車と災害救助犬を派遣して作業を支援した。しかし、有害廃棄物による汚染は、Marcal川、Raab川、そしてドナウ川にまで及んだ。

10月9日には、再び決壊の恐れがあるとして、被害を受けた村のひとつであるKolontárの住民が避難した。この村を再度の流出から守るため、新たなダムの建設がすでに始まっている。

ハンガリー政府は10月5日、工場の所有者であるMAL Zrtの営業を停止し、同月11日には当局がMAL社のCEOであるZoltan Bakonyi氏を拘束した。同氏は刑事過失罪(criminal negligence)に問われる可能性がある。

また、ハンガリー政府は、MAL社は流出による損害に対する賠償金の支払いを要求されるだろう、と述べた。最初に見積もられた賠償金の金額は、約1億ドル(約82億円)となっている。

いっぽう、欧州委員会は10月12日、今回、ハンガリーで起きた事故は、欧州連合(EU)の環境賠償責任ルールの再検討に反映され、加盟国における欧州レベルでの産業施設の安全検査を促進する可能性がある、と述べた。

EUでは2004年、環境賠償責任指令が採択された。この指令は、「汚染者負担」の原則を法律に盛り込んでおり、EU環境法の重要なよりどころとみなされている。