中国・北京市での汚泥投棄で検察が巨額の賠償を要求、損失は1億元を超えるとの公的機関の評価

2008年5月、北京市の環境保護部門が住民から通報を受け、門頭溝区上岸村東側の2つの土砂を採取したあとの穴に、大量の汚水処理物が投棄され、連日悪臭がたちこめ、住民の日常生活に影響していることが発覚した。

調査の結果、投棄物は北京市清河、酒仙橋の汚水処理場で発生した汚泥で、この2つの穴は、上岸村の村民の劉永祥と北京外から来ている蒋小兵がそれぞれ土砂採取を請け負っているものと判明した。

事件は公安機関に移管され、調べた結果、2003年以来、清河、酒仙橋の2つの汚水処理場の汚泥処分は、何濤が設立した北京環興園環保科技有限公司が請け負っていることが判明した。

2006年10月から2007年7月の間に、何濤は自社の運転手である被告の劉書力の紹介で、トラック一台当たり70~100元(約1300円)の料金で、被告の劉永祥が請け負う土砂採取場に汚泥4000トン余を投棄、被告の呉健華の紹介で同様の料金で被告の蒋小兵が請け負う土砂採取場に汚泥2000トン余を投棄した。

測定によると、汚泥には多くの重金属が含まれ、CODcr、BOD、アンモニアチッソ、糞大腸菌群数がいずれも基準値の100~200倍以上に達し、悪臭ガスの強度は3級から5級、汚泥からは乙類伝染病病原体であるシガ氏菌も検出され、地域に重大な環境汚染がもたらされた。

2つの採取場の対策費用は概算でそれぞれ300万元(約4000万円)と62万元(約800万円)とされる。中国気象科学研究院環境影響評価センターの見積もりでは、これら採取場の汚染対策費の概算は8030万元(約10億円)であり、長期の環境汚染を追加すると、その損失は軽く1億元(約13億円)を超える。

裁判で、門頭溝人民検察院は5名の被告に刑事責任を追及する以外に、公訴機関の名義で8000万元(約10億円)の刑事付帯民事賠償を請求した。

公訴機関の名義で被告人にこのような高額の民事賠償を請求したのは、北京市で初めてのことである。

刑法第338条によると、重大環境汚染事故罪を犯したものは、3年以下の懲役とし、罰金を課し、特に結果が重大なものは、3年から7年の懲役とし、罰金を併科するとしている。

1年にわたる審理を経て、門頭溝区人民法院は判決で、何濤に懲役3年6カ月、罰金3万元(約40万円)、他の4名中、2名には執行猶予刑と罰金、あとの2名は刑事罰なしとした。判決に対して何濤らは受け入れを表明している。

8000万元の刑事付帯民事賠償について、裁判所は同時に判決を出さず、別途処理するとしている。

司法部の統計では、2009年末現在、登録された司法鑑定機関は4783あり、司法鑑定人は5万名余である。2009年の一年間に行われた各種鑑定は103万件であったが、司法鑑定の比率は小さい。今後、環境司法鑑定活動の規範化、法制整備が必要である。環境保護部は2010年11月16日に環境保護部環境規画院の中に「環境リスク及び損害鑑定評価研究センター」を設立した。

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