グリーンピース、フィリピン政府に工場廃水等の化学物質情報開示の制度化を要求

グリーンピース東南アジアは2010年11月4日、フィリピン政府に対し、企業が排出する工場廃水に有害な化学物質が含まれないようにするための義務的な化学物質情報開示制度の実施を求める抗議行動をおこなった。この日の行動では、グリーンピース・ウォーター・パトロールの隊員らがゴムボートでMarikina川沿いの2つの工業施設の4つの排水口をまわって警告標識を立て、工場からの有害な廃水の排出を防止する政策がないことについてフィリピン政府の注意をうながした。

この日の行動の趣旨について、グリーンピース東南アジアのBeau Baconguisはこう述べている。「われわれには、飲んだり、そこで魚を獲ったり、入浴に使ったりする水にどのような化学物質が入り込んでいるのかを知る権利がある。Marikina川には何百本もの排水パイプが口をあけており、そこから毎日おびただしい種類の有害化学物質が川に入り込んでいると考えられる。だが、正確なことはだれにもわからない」

Baconguisはさらにこうつづける。「フィリピンの河川や湖沼が有害化学物質の事実上の最終処分場として使われていることもまれではなく、そのことを、多くの国民は知らない。工場などの産業施設からMarikina川に直接排出される有害化学物質のカクテルは、最終的にはラグーナ湖に注ぎ、マニラ首都圏と南タガログ地方の諸州の水源でありまた食糧源でもある湖を汚染している」

PRTRなどの情報開示制度を提言:

グリーンピースはこれまでも、汚染物質排出・移動量届出(PRTR)制度のような、汚染物質削減という共通の目標へ向かってさまざまな部門が参加できる汚染物質情報開示制度の導入を提言してきた。こうした制度を導入すれば、製造業者は製品の設計により工夫をこらし、生産の各工程において有害化学物質の使用が減り、無害な物質への置き換えが進むと考えられるからだ。

グリーンピースも指摘しているように、こうした汚染物質情報開示制度はすでにアメリカ、EU諸国、日本、韓国、メキシコ、中国などで実施されている。アメリカでは、PRTR制度が1980年代に導入され、それ以後、環境への汚染物質の排出量が劇的に減少したことから、汚染情報への国民の自由なアクセスが排出削減にはきわめて重要であるとグリーンピースは主張している。