GEの新白書、水の再利用やリサイクルを広く行き渡らせるにはもっと良いインセンティブが必要と指摘

世界の都市用水や工業用水の消費量は、2050年までに2倍になると予測されているが、世界の人口の5分の1、つまり約12億人の人々、はすでに水不足の地域に住んでいる。われわれの惑星の利用できる水の先細りする供給を限界まで引き伸ばすための最も効果的な方法の1つは、再利用やリサイクルを増やすことであるが、この分野の進展は、多くの経済的、政治的、社会的な理由で限られている。

GEが2011年3月下旬に発表する新しい白書によると、水の再利用やリサイクルを増やすための効果的なインセンティブがないことが主な障害として挙げられる。この白書では、この問題の多面的な本質が説明され、また水の再利用やリサイクルを促すのに有効であった世界各国のさまざまな政策や仕組みが紹介されている。GEは、4月5、6日にサウジアラビアで開催される同社の水再利用サミット「使用済みから有用へ(Used to Useful)」においてこの白書を発表するつもりである。

GEの1部門GE Power & Water のHeiner Markhoff社長・最高経営責任者は、「当社の目標は、淡水の供給を維持するための行動を促進することである。ほぼすべての水に関する課題を解決するための費用効果的な技術は、すでにある。したがって、焦点をこの方程式の人の側に置く必要がある。そのことについては、当社は4つの主なアプローチを考えている。すなわち、人々がその必要性と恩恵が分かるようになるために教育やアウトリーチ(教育以外でこの情報を広く与えるための努力)を増やす、お役所仕事などの障害を取り除く、命令や規則を効果的に用いる、そして効果的なインセンティブを構築することである。この最後のアプローチが当社の最新の白書の焦点である」と述べた。

GEの白書Creating Effective Incentives for Water Reuse and Recycling(水の再利用とリサイクルのための効果的なインセンティブを構築する)では、次の4つの政策の選択肢が検討されている。

(1)    水の価格設定/放出料
水の価格を値上げは、必ずしも選択肢になるとは限らないが、水不足を反映したり外部環境コストを組み込んだりするために使うことができる。
ニューヨーク市は、消費量に基づいて水の価格を下げることによって再利用を促進できる場合の1例を提供している。水使用目標を満たす総合的水再利用システム(CWRS:comprehensive water reuse system)を導入したビルでは、上下水道料金が25 %値下げされる。これは、大口の水の消費者にとっては何百万ドルもの運営費の削減になる。このビルでは、衛生廃水とシャワーや洗濯機からの廃水が取り込まれ、処理され、リサイクルされる。

(2)    水質取引と水需要取引
水質取引プログラムでは、汚染の削減費用に金のかかっている会社が金のかかっていないほかの会社や水源から汚染削減クレジットを買うことができる。同様なプログラムが水需要に関しても実施できる。
たとえば、1980年代にオーストラリアのMurray-Darling流域における干ばつによって農業従事者の水利権が通常の10~20 %に下がったとき、多くは、不十分な資金で作物を植え付けるよう努めるより受け取った限られた水の割り当てを取引することを選んだ。

(3)    優遇税制/助成金
政府は、インセンティブやさまざまな税額控除、免除、助成金を用いた資金供給によって水再利用への投資の状況を改善するのを支援できる。
生産税額控除/投資税額控除プログラムによって推進されて過去数年にわたり再生可能エネルギー部門において起こった著しい成長に注目して、白書では、水部門における多くの類似点や機会について詳しく検討している。

(4)    官民のパートナーシップ
公共水事業者が世界中で今もほとんどの上下水道を提供しているが、官民のパートナーシップは、ますます水再利用インフラへの投資をうながす効果的な手段とみなされている。
民間企業による上下水道を使っている人々の数は、1990年の5100万人から2002年には3億人に増えている。特にたとえば、基本的な水関係インフラがまだ整っていない地域に新しい地域社会が出現している乾燥した米国西部といった地域では、民間の経営者がそのような需要を満たすのに必要な特別な問題のための1種の分散型の解決策を提供できることがよくある。

白書には、インセンティブは、その種類にかかわらず、すでにあってうまく機能している規制構造の範囲内で実施される場合にもっとも有効であることが経験的に分かっていると記されている。たとえば、シンガポールの目標は、飲料水の供給の重要な一部として再生水を使うことである。この都市国家は、いくつかの政府の部署をまとめて環境・水資源省を作ったが、これが30 %の水の再利用率を実現するのに役立つ主な要因となっている。

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