国連、水不足を減らすための投資戦略に関する報告書とバイオエネルギー生産のための水使用に関する報告書を発表

国連はストックホルムにおける「世界水週間(World Water Week)」会議の期間中の2011年8月25日、水部門へ1980億ドル(約15兆2000億円)、すなわち全世界の国内総生産(GDP)の0.16 %を投資すれば、4年以内に水不足を減らし、安全な飲料水と基本的な衛生設備を継続して利用できない人々の数を半減できる可能性があることを指摘した報告書を発表した。

国連環境計画(UNEP)によるグリーン経済報告書の水の章(正式名称:Towards a Green Economy: Pathways to Sustainable Development and Poverty Eradication–Water: Investing in natural capital(グリーン経済に向けて:持続可能な開発と貧困の根滅に通じる道-水:自然資本への投資))の要点を以下に示す。

飲料水や衛生設備に投資し、地域の給水設備を強化し、給水にとって重要な生態系を保全し、もっと効果的な政策を策定すれば、不十分な給水によって生じる多額の社会的・経済的費用を避けるのに役立つ。
たとえば、カンボジア、インドネシア、フィリピン、そしてベトナムは、粗末な衛生設備によって生じる問題のせいで1年におよそ90億ドル(約6900億円)、すなわちこの4カ国を合わせたGDPの2 %を失う。

グリーン投資シナリオの下で作成したモデルで計算してみると、世界の水使用は、持続可能な上限以内に保てる可能性があり、また、安全な飲料水と基本的な衛生設備を継続して利用できない人々の数を半減させるというミレニアム開発目標(MDG)が2015年までに達成されるという可能性があることが示された。

世界の高まるエネルギー需要を満たすことができるためには水をもっと効率よく環境を破壊せずに継続的に使うことが極めて重要である。
国が豊かになり、人口が増えると、産業による水需要が増加すると考えられる。たとえば、中国ではこれからの25年間の水需要の増加の半分を超える部分は、産業部門の大幅な拡大によって起こると見込まれている。

なお、UNEPは、グリーン経済を、大幅に環境リスクや生態系の欠乏を減らすと同時に、人の福祉や社会的公正の改善をもたらす経済、もっとも簡単に言えば、低炭素で、資源効率が良く、あらゆる人々が参加する経済、と定義している。

やはり2011年8月25日に発表された別の報告書The Bioenergy and Water Nexus(バイオエネルギーと水の関係)の主題は、バイオエネルギー生産のための水使用である。UNEPとOeko-Institutと国際エネルギー機関(IEA)が共同で作成したこの報告書の要点は、次のとおり。

バイオエネルギーを生産するための水需要は、主にたとえば、穀物など、このエネルギーの原料の栽培と加工に大きく関係している。そしてこのことが、持続可能な農業、土地利用、食糧生産に重要な影響を与える。

地球上の淡水の70 %を超える量が農業で用いられている世界で、バイオエネルギーの開発は、すでにある危機をさらに増大することがないよう慎重に計画を立てなければならない。世界の人口は21世紀の半ばまでに90億人に達すると予測されるので、この計画には、食物、家畜飼料、繊維などの様々な用途のために同じ原料に対する需要が増えること、かつその需要の競合性が増していくことを反映させる必要がある。

全体的なアプローチを取り長期的に見通すこと、持続可能な水管理を確実にするために決定は影響評価に基づいてすること、効果的な水関連の政策を策定・実施すること、技術開発を促進することなどが勧告されている。