欧州委員会は20を超す水質汚染物質を取り締るための新たな水質基準案を2011年9月に提出することを望んでいる。しかし、健康・環境リスクに関する科学委員会（SCHER：Scientific Committee on Health and Environmental Risks）はその多くの基準には妥当性がないとして非難している。

EUの水枠組み指令（2000/60/EC33）は、SCHERに水環境に影響を及ぼす物質を優先物質として特定し、環境基準（EQSs：Environmental Quality Standards）を設定することを要求しており、すでに33物質について環境基準が定められている。欧州委員会は2010年、さらに19物質の追加を勧告した。また、鉛、ニッケル、アントラセンなどの基準の引き上げも検討されている。環境基準案は2011年6月までに最終決定される予定であったが、欧州委員会は現在、9月に欧州理事会および欧州議会への提出を望んでいる。現在はブリュッセルにてEU各国の専門家により審議が行われている。

SCHERは2011年3月から7月にかけて環境基準案への意見を公表し、PBDE（臭素系難燃剤）、ダイオキシン類、イブプロフェン、シペルメトリン、ナフタレンそしてジコホルの新しい基準の妥当性へ懸念を示した。欧州委員会は206あるすべてのPBDEに対し同一の環境基準が設定されていることを批評している。また、シペルメトリンとジコホルの算出方法に誤りがあったことが発覚、ナフタレンの基準の算出方法は十分な根拠がないということも判明した。さらに、イブプロフェンの調査書類は疑問視されている研究に基づいており、SCHERが評価できる段階に至っていない。しかしSCHERは、同研究は環境基準を設定する上での十分な根拠にはならないという専門家の賛同を得ている。

いっぽう、その他の物質の環境基準については問題なく、科学委員会による審査も終了し、変更の必要性はほとんどない。EUの官僚はSCHERの意見が最終決定に反映されるかどうかは明らかにしていない。