欧州委員会、2020年へ向けた水政策に関する意見募集を開始

欧州委員会は2012年3月15日、水の安全保障のためのEU基本環境政策(Water Blueprint)に盛り込むための政策オプションに関する意見募集を開始した。同文書において、EUの水関連法規を2020年までに改定していくことを含めた、いくつかの提案が行われた。意見募集は2012年6月7日まで実施される。

今回発表されたコンサルテーションペーパーでは、流域の管理者がその流域への流入量および流出量、土地利用が地下水に及ぼす影響、気候変動による降雨への影響などの情報をほとんど有しておらず、効率的な水源管理が実施されていないことが指摘された。また、農業分野などにおける水使用効率に対する取り組みの不足、使用効率の改善に寄与していない水道の料金設定、そして一貫性のない水管理体制などが問題点として取り上げられた。EUの水質は、水枠組み指令(2000/06/EC)の実施によって、改善されているものの、法規の実施体制において基本的な欠点が存在することも指摘された。

水問題に対する具体的な政策オプションとして、EU加盟国に干ばつ対策計画の提出を求めることや、建物や製品を対象とした最低水使用基準の設定、企業の最終水使用量の削減義務などが提案された。また、農業分野における水資源への影響を削減する政策として、灌漑プロジェクトに適用される環境影響評価方法の変更などが挙げられた。メーターの設置が、農家が補助金の交付をうけるための条件になる可能性もある。さらに、廃水の再利用に関する標準の活用も提案された。

水道料金の価格設定に関しては、想定されうる6つの措置が提案された。そのうちのひとつが水枠組み指令の改正であり、水道料金は水の使用量に基づいて決定され、流域レベルでの水のやり取りが許可されるようになる。

欧州委員会は、2012年内にWater Blueprintを発表する予定であり、水枠組み指令をはじめとしたEU水政策の実施や達成状況、また不足している措置についての評価が行われる。そして、その評価に基づき、水政策を強化するための取り組みや、水環境の脆弱性を改善するための措置を決定する。Water Blueprintは、持続可能で公平な水の使用のために水質が良い状態であることを保証するという、水枠組み指令に則した長期的な視点に基づいている。欧州2020戦略、および資源効率ロードマップと密接に関わってくるため、Water Blueprintの時間軸は2020年であるが、実際には2050年までを見越したさらに長期的なスパンが取られている。

URL:水の安全保障のためのWater Blueprintへ向けたコンサルテーションペーパー
http://ec.europa.eu/environment/consultations/pdf/blueprint.pdf

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