米国の水事業者、気候変動の影響に備えるために連邦政府の支援を求む

2012年3月20日、連邦議員を対象に行われた水事業者の困難への適応力(resiliency)と持続可能性に関するブリーフィングにおいて、事業者の代表者や市や郡の当局者が、米国の廃水処理と飲料水の供給者は気候変動の影響に備えたインフラ整備に多額の財政援助を必要としている、と訴えた。

上水道事業者を代表する大都市水道局協議会(AMWA)と公営下水道事業者を代表する全米水質浄化局協会(NACWA)が行ったこのブリーフィングで、Las Vegas Valley Water DistrictのPat Mulroy区長は次のように述べた。

  • 我々が直面している最大の課題は財政難である。きわめて資本集約的な費用が発生するが、我々にはそのような債務を負担する余裕はない。
  • ラスベガスでは現在、気候変動の結果である現象が起こっており、水事業者はミード湖の水位低下に対処するための取水口の追加に投資しなければならなくなっている。
  • 水事業者は、連邦政府からの施し物を求めているわけではなく、むしろ、気候の変化に起因する水の流出あるいは深刻な不足に備えたインフラ整備に役立つ、低利融資を含めた、あらゆる形態の支援を求めている。

AMWAとNACWAが委託したCH2M Hill(さまざまなプロジェクトのコンサルティング、設計、設計・建設、運営、プログラム管理などをする会社)による2009年の調査は、水事業者が気候変動の影響に適応するための累積コストは、2050年までに4480億ドル(約37兆円)から9440億ドル(約82兆円)に及ぶと結論した。

気候変動は、ラスベガスなどの西部の州が直面している干ばつ、あるいは洪水、暴風雨、海面の上昇を引き起こす可能性がある。これらが起こると、次にワシントン州のKing郡が経験しているような塩水の淡水源への侵入、そして地下水の枯渇、水質悪化、インフラの洪水被害などを引き起こす可能性がある。

ニューヨーク市環境保護局のAngela Licata持続可能性担当次長は、水道料金を支払う一般市民だけではそれらの費用を負担しきれない、と述べた。

いっぽう、CH2M Hillの水ビジネス・グループで国際サービス.チームを率いるKathy Freasチーム長は、このブリーフィングにおいて、米国環境保護庁(EPA)は水事業者が今あるインフラの機能を高めて維持するために5000億ドル(約41兆円)が必要だと見積もっているが、不十分な資金をできるだけ効率的に利用するために、事業者はインフラの修理時に機能を改善することも可能だと述べた。

水インフラを気候変動による変化に適応させるための助成金を提供する法案:

2011年8月にLois Capps下院議員(民主党、ニューヨーク州選出)が提出した「水関係インフラ適応力・持続可能性法(Water Infrastructure Resiliency and Sustainability Act)」案は、インフラを水文学的条件の変化に適応させようとする地域に競争的助成金(助成金の申請者が競合して獲得する助成金)を提供することを謳っている。

Capps議員は、今は水事業者に賢明な投資をすべきときだと述べている。この法案には20人の民主党の共同提案者がいるが、共和党は、気候変動の影響に対処するための連邦の規制や政策を嫌っている。

AMWAのDan Hartnett氏は、この法案の提案者は幾人かでも共和党員の支持を得ることを願って法案から「気候変動」という言葉を除いたとし、目標は水事業者が直面する急を要する必要性をについて議会に情報を与え続けることであると述べた。

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