米国水質浄化法制定40周年――フォーラムで水道事業関係者が現在の課題を指摘

1972年の水質浄化法(CWA)制定から40年になろうとしている。2012年4月24日に開かれた「全米環境政策フォーラム(National Environmental Policy Forum)」で、地方自治体や州の水道事業関係者が同法をめぐる新しい課題に言及した。

【全米水質浄化局協会(NACWA)のKen Kirk専務理事】

  • 1969年に油にまみれたごみなどからオハイオ州にあるカイヤホガ(Cuyahoga)川に火がついたことが人々の怒りを招き、それがCWAの制定につながった。同法は飲料水の浄化に大成功を収めたが、その成功が新たな危機をもたらす可能性がある。
  • 廃水や飲料水の処理を所管する州や自治体の政府に課される連邦の規制や要件が増えたため、これらの政府は、連邦からの資金提供が不十分であるにもかかわらず、処理施設の機能を高めるために全米で1億ドル(約80億円)を超える莫大な資金を使っている。
  • 資金提供に大幅な不足があるだけでなく、一般の人々の支持もあまり得られていないようなので、水質レベルがCWA制定以前の悪い状態に戻るリスクがある。
  • CWAの成功を次のレベルに高めるには、(1) 農業由来の栄養塩類の流出にもっと焦点を合わせるべきであるし、(2) 総合政策と総合計画にもっと留意すべきであるし、かつ、(3) 十分な資金提供を確保するための持続的な連邦政府の支援システムが必要である。
  • 米国の水質浄化の必要性を満たすのを支援するために、国民を対象とする継続的な啓蒙キャンペーンが必要である。

【大都市水道局協議会(AMWA)のMichael Arceneaux副理事】

  • さらなる資金の提供を求めている団体には、もっと積極的で協調的なアプローチを求める。しかし、現在の難題は、活気のない経済と慎重な議会である。

【水質浄化管理者協議会(ACWA)のAlexandra Dunn専務理事兼総合弁護士】

  • 州政府は緊縮財政をしいているのに、46の州は水質浄化許可プログラムの実施を連邦から委託されているため、検査、保守、規制執行の大部分を実行しなければならないし、高水質の水を確保しなければならないし、不特定汚染源に対処しなければならない。
  • 2002年に行われた最新の州の資源分析で、州政府がプログラムを実施するのに全米で8億ドル(約640億円)もの連邦補助金が不足していることがわかった。この分析以降、補助金の金額は横ばいだが、農薬の許可、大規模畜産経営体、電子報告、冷却水取水構造物などに関する新しい連邦の規則が加わったため、州政府の費用負担が増えている。
  • 汚染問題は流域ベースで対処する必要がある。CWAの課題には、連邦規制を増やすより、ボトムアップ・アプローチによって対処すべきと州政府の当局者は考えている。

【水環境連盟(WEF)のEileen O’Neill専務理事代理】

  • 水質に関する新しい課題は、過去のものと異なり、流域アプローチと持続可能性に集中していると理解している。このような課題はまた、たとえば、処理済み廃水からのリン酸肥料の生産といった水資源の回収や、地域社会の環境に配慮した新しい取り組みなどの新しい機会を提供するものである。新技術と市場ベースのインセンティブなどの新ツールは、これらの機会を活用するのに役立つ可能性がある。

【非営利団体American Rivers(米国の河川)の水質浄化プログラム担当のKatherine Baer上級職】

  • 新しいアイデアと独創力は重要だが、すでにある法律によって後押しされていることに留意しなければならない。したがって、さらなる規則がまだまだ必要である。
  • 高水質の水を確保するのに十分な判断基準を持っている州政府は約半分にとどまっているため、連邦政府からの指針がもっと必要である。
  • CWAの対象水域をはっきりさせる規則を求める。このことについては、今までのところ無用な対立した論争が相変わらず行われている。

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