Veolia、イギリスの公共水道事業を19億ドルで売却―債務圧縮の一環

フランスの巨大ユーティリティ、Veolia Environmentは、イギリスで保有していた公共水道事業の過半数の株式持ち分を債務込みで12億4000万ポンド(約19億2000万ドル、約1530億円)で売却した。これにより同社は、収益性の回復と債務の圧縮へ向けて大きく一歩を踏み出した。

Veoliaは、前CEO、Henri Proglioの貪欲なまでの企業買収によって累積した債務を圧縮すべく、現会長兼CEOのAntoine Frerotが2011年12月に事業の再編を公表していた。今回のイギリスの公共水道事業売却は、その再編路線の最初の大きな動きである。

Veoliaの負債総額は2011年末現在で147億ユーロ(約1兆4600億円)だったが、これが今回の売却で14億5000万ユーロ(約1440億円)ほど圧縮される。Veoliaは、2013年末までに総額50億ユーロ(約5000億円)の資産売却によって負債を120億ユーロ(約1兆2000億円)以下に圧縮する目標を掲げている。

予想を上回る好条件での売却:

アナリストらは、Veoliaがすでに売りに出していた物件のうちで最も魅力的との評価が一般的だったイギリスの公共水道事業で、対価として受け取る金額が予想を超えたものだとの見かたを示している。これには、ポンドがユーロに対して強まっていることが影響しており、それがユーロに換算した売却価格の底上げにつながった。また、Exane BNP Paribasのアナリスト、Yohann Terryはこう述べている。「現在の流れでは、公共ユーティリティ資産は買い手にとってきわめて魅力がある。守りに強く、経済成長によって価値が目減りすることがない」

Veolia Environmentの株価は、過去12ヵ月で46%下落したが、この売却成約の公表後にほぼ1%上昇して10.29ユーロ(約1021円)となった。この上昇率は、ユーティリティ株全体の平均上昇率0.2%を大きくしのいでいる。

Citibankのユーティリティ・リサーチ部門を率いるSofia Savvantidouは、リサーチ・ノートにこう記している。「売却のタイミングは予想より2ヵ月早く、売却価格は予想を1億5000万ユーロ(約150億円)ほど上回った」

Veoliaは今後も10%を最低5年間は保有:

買い手側のRift Acquisitions Ltdとの契約で、Veoliaは今後も、売却した公共水道事業の株式の10%をすくなくとも5年間は保有することになっている。また、公共水道以外の水事業については、これからも保有をつづける。こうして、公共水道事業にわずかながらも足がかりを残すことで、Veoliaはこれを公共水道以外の水事業とのシナジーに役立てることができるとアナリストらは指摘している。

なお、Rift Acquisitionsは、Prudential Plcが管理しているインフラ投資ファンドと、Morgan Stanley Infrastructureのパートナーらから成る共同事業体である。

長期債務の圧縮が喫緊の課題:

Veoliaにとって、今回売却したイギリスの公共水道事業は、フランス国有銀行との合弁輸送会社であるVeolia Transdevの50%の保有株式や、アメリカにおける固形廃棄物事業など、これまで売りに出されているいくつかの資産のひとつである。また、Veoliaのリストラ計画には、現在事業を展開している70ヵ国のおよそ半分からの撤退も含まれている。

Moody’sやFitchといった格付け会社は、この数ヵ月間でVeoliaの債券格付けをそれぞれBaa1とBBB+に引き下げた。これは、Électricité de France(EDF)、GDF Suez、Suez Environmentなどのフランスのユーティリティのなかでは最低の格付けで、Veoliaの資金調達のハードルは以前よりも高くなっている。

Veoliaの過去の拡張路線がいかに過激なものだったかは、正味資産の2.36倍という長期債務に如実にあらわれている。ちなみに、Veoliaの直接のライバルであるSuez Environmentの場合はこの数字は1.61倍、EDFは1.37倍、GDF Suezは0.69倍である。

Frerot CEOにとっては、まだほんの一歩:

これまでの一連のリストラの動きで、Frerot CEOは、半国有の電力会社であるEDFの社長を現在務めているProglioや、Veoliaの主要株主である公的金融機関のCaisse des Depotsの批判に曝されることになった。かつてはProglioの右腕であったFrerotは、ここまでなんとかVeolia内部の突き上げをしのいできたものの、CEOの椅子に留まりつづけるには、イギリスの公共水道事業の売却はほんの一歩にすぎない。

「今回のことはFrerotの評価をあまり左右することにはならず、むしろTransdevの件や収支の内容が重要になってくるだろう」とExane BNP Paribasのアナリスト、Terryは言う。また、CitibankのSavvantidouはリサーチ・ノートに、「今回の売却は経営陣の断固たる意思を示すものであり、すくなくとも、この売却プログラムが株価に全面的に反映されるはずだ」と記し、Veolia Environment株を、15.5ユーロ(約1520円)をめざした「買い」とランクづけている。

なお、今回のイギリスの公共水道事業売却にあたっては、国際ロー・ファームのSimmons & SimmonsがVeoliaの顧問を、LovellsがRift Acqusitionsの顧問をそれぞれ務めた。

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