企業のトップは水関連のビジネスリスクを未だ十分認識していない ――国際NPOのカーボン・ディスクロージャ・プロジェクト(CDP)が警告

国際NPOのカーボン・ディスクロージャ・プロジェクト(CDP)は、2012年10月23日に公表した水問題への企業の取組に関する報告書「The Global Water Report 2012」の中で、水に関連したビジネスリスクが、企業の取締役会レベルでは十分に取り上げられていないと警告した。同報告書は、水に関連する世界的な企業185社からの、水問題への取組や水危機の緩和策などについての回答をもとにまとめられたものである。報告書は以下のURLから閲覧可能である。
https://www.cdproject.net/CDPResults/CDP-Water-Disclosure-Global-Report-2012.pdf

2012年の調査結果の概要:

2回目となる2012年の調査では、水に関連するリスクやチャンスに対する企業内での認識の改善が見られ、回答した企業のうち68%が、自社のビジネスにおいて水を高いリスクとして捉えていることがわかった(2011年の調査では59%であった)。一方で、過去5年以内に水に関連する問題が、実際にビジネスに悪影響を与えたと回答したのは、2011年は38%であったが、2012年には半数を超える結果となった。また、生活必需品関連の企業に限ると、過去5年間で水が原因となり悪影響を受けたのは、2011年の40%から2012年の81%へと2倍に増加し、全体平均よりもかなり高い値であることが分かった。

しかし、このような結果にも関わらず、社内の取締役会レベルで水に関する政策や計画を議論している企業は39%しかなく、具体的な目標値を定めているのはわずか30%であった。また、直接的に自社のビジネスに関わる水のリスクに対する認識は高まっているが、サプライチェーン全体ではいまだに十分に取り組まれていないことも判明した。これは、国際的な会計コンサルティング企業であるKPMG社が、つい先日公表した報告書でも強調されていたことである。

また、2011年に行われた調査への回答率と比較して、2012年はほぼ同程度であったが、投資家が抱いている水問題への関心の大きさを考慮すると、これは残念な結果であるとCDPは言及している。

単独ではなく共同的なアクションの重要性:

今回の報告書では、1つの企業が単独で水不足の問題を解決するのは困難であることを受け、共同的なアクションの重要性が強調された。実際に、地域単位の活動(56%)、サプライチェーン管理(43%)、もしくは関連する政策(24%)などといった共同アクションに最低1つは参加していると回答した企業は全体の75%に上った。これらのアクションには企業だけでなく、政府、規制当局、NGO、地域コミュニティ、サプライヤーも関与している。

国際的な水管理の展開:

一方、水管理に関する国際組織である水管理同盟(AWS:The Alliance for Water Stewardship)は、国際的な水管理基準に関して定めた第2草案をまもなく公開する予定である。2012年6月に終了した第1草案に関する協議では、世界26か国から約400の企業が集まり、参加者らは、管理基準は単純かつ明快であり、その決定には業界や地理的な差異を考慮するべきであると提案した。さらに、管理基準を実施する上でのコストやデータについての実現可能性を調査するべきであることも言及された。