EUでのシェールガス開発の影響について、さらに3件の研究報告を欧州委が発表

欧州委員会がEUにおけるシェールガス開発の影響について、さらに3件の研究結果を発表した。このうち、シェールガスがEUエネルギー市場に与え得る影響について共同研究センター(JRC)がまとめた報告書(下記URLで閲覧可能)によると、「本格的なシェールガス開発は天然ガス価格を引き下げ得る」ものの、それで「EUで天然ガスの自給が可能になるわけではなく、最も上手くいった場合でも、従来生産量の減少分を補い、輸入率を今と同じ60%程度に抑えることを可能にするだけ」という。
http://ec.europa.eu/dgs/jrc/downloads/jrc_report_2012_09_unconventional_gas.pdf

一方、気候行動総局の委託で英国のコンサルティング会社AEAがまとめた「EUでのシェールガス開発の気候影響」に関する報告書(下記URLで閲覧可能)によると、シェールガスの温室効果ガス排出量は、従来の天然ガスより多いが、十分管理されれば、天然ガスのパイプライン輸入より最高10%ほど減らし得るという。ただし、こうした知見は“明確とは、とても言えない”と釘をさしている。一方、発電分野ではシェールガスは石炭と比べて温室効果ガス排出量を41~49%減らすとし、その気候面での優位性について、より自信を持って指摘している。
http://ec.europa.eu/clima/policies/eccp/docs/120815_final_report_en.pdf

このほか環境総局の委託でAEAが作成した報告書「欧州でのシェールガス開発の水圧破砕活動が生じさせ得る環境・人体リスクの特定支援」によると、シェールガス田は従来のものより環境や人体にとって危険度が高いという。同報告書(下記URLで閲覧可能)は、個々の事業の地下水および地表水の汚染リスクを「高」と評価し、大気や生物多様性への影響リスクを「中」、地震危険度を「低」としている。その上で、複数の施設の累積的影響のほうが格段に大きいものになると警告している。そして、結論として「リスクを緩和し、公衆の信頼を向上させるためには、健全な規制体制が必要になる」としている。これは、産業汚染物質指令や水質関連指令、環境影響評価(EIA)指令などの関連規制間のズレや隙間を無くすことを意味する。欧州委員会はEIA指令の改正案を2012年秋に発表する予定である。また同報告書は、水圧破砕に関するEU法の各加盟国による解釈にも注視する必要があると指摘している。
http://ec.europa.eu/environment/integration/energy/pdf/fracking%20study.pdf

安全性向上のために現行法を改正する可能性については、前に発表されたエネルギー総局の委託研究でも言及されていた。そうした中、今度はチェコがシェールガス開発のモラトリアムを2012年9月3日に宣言した。この一時禁止措置は10月中旬から適用され、開発の影響が十分に研究され、リスク管理が改善されるまで(最短でも2013年6月まで)継続される。

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