オランダ研究所「気候変動の影響で、地表水を飲料水として使えなくなるおそれ」

オランダ環境省傘下の国立公衆衛生環境研究所(RIVM)が発表した報告書『飲料水取水地点の水質への気候変動の影響』(以下のリンクに、オランダ語の現物)によると、オランダの地表水は2050年には気候変動の影響や汚染物質で汚染され、飲料水源として使えなくなるおそれがある。オランダは、総面積4万1500kmの国土の約5分の1を、湖、河川等の地表水や堤防で覆われている。
http://www.rivm.nl/dsresource?objectid=rivmp:186677&type=org&disposition=inline

オランダ上水道事業者協会(Vewin;http://www.vewin.nl/english/Pages/default.aspx)によると、オランダ国民の約4割は、地表水を処理した飲料水を飲んでいる。オランダには水会社が10社あり、年間約12億m3の飲料水を生産している。この量は、1952年の生産量よりも3倍多いという。

RIVM報告書の結論は次のとおりである。

(1)    飲料水取水地点の水質悪化は、渇水年に起きている。数日から数カ月にわたって渇水が続くと、地表水の水質が基準を超えてしまう。つまり、渇水時に河川の流量が減るため、下水処理場からの流失物が希釈されにくく、河川への影響が通常よりもはるかに大きくなる。その結果、水質が悪化する。

(2)    異常な渇水年にはすでに、地表水の水質が基準を超えて悪化している。こういう事態が将来、増えるおそれがある。その頻度は、気候変動の進行程度にかかっている。

(3)    地表水を飲料水用に使っているオランダ地域のおよそ半分では、渇水期になると、運河や河川の支流の流量が非常に低下している。こうした支流の水位を人工的に固定したまま、流量の変動幅を小さくしていけば、水中物質の計算濃度に深刻な影響を与えるおそれがある。

(4)    したがって、利害関係者がすべて立ち会って、各々の取水地点を個別に分析するよう勧告する。そのあと、リスクの程度をよく検討すべきである。考えられる是正策は、水域に排出される可能性のある物質に対する監視の強化、下水処理場からの流出物の削減、水流停滞域の浚渫、飲料水処理工程の品質改善、雨期での予備飲料水の生産などがある。

VewinのMarco Zoon広報担当は、「この報告書は、オランダの上水道事業者がすでに取り組んでいる対策に支持を表明したものといえる。われわれはつねに、水質改善のため新しい方法を探している。また、飲料水確保に大きな余裕をもって臨んでいる」とコメントした。