UAEで第1回国際水サミット開催――アラブ地域の水不足はエネルギー部門にとって迫りくる危機であると専門家指摘

アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで2013年1月15~17日、第1回目となる「国際水サミット(IWS:International Water Summit)」が開催された。IWSは、「世界の将来的なエネルギーに関するサミット(WFES:World Future Energy Summit)」と並行して開催されたものである。このIWSにおいて専門家は、アラブ世界全域における水不足が同地域のエネルギー部門にとって迫りくる危機であり、地域の成長や世界市場に影響を及ぼすことになると指摘した。世界銀行や国連の関係者は、今後のエネルギーに関する議論と気候変動に対処する政策に水問題を加えるよう世界各国の政府に要請している。

UN-Water (国連ミレニアム開発目標を達成する各国の水関係の取り組みを支援することを目的とする国連の機構)の議長を務めるMichel Jarraud世界気象機関(WMO)事務局長はIWSにおいて、「水は、エネルギーを生み出すために必要であり、エネルギーは、水の採取、処理、収集、分配に必要である。水とエネルギーは、分野横断的な問題で、ほとんどの社会経済部門の全域でこの問題の要求が高まって、各国の政府や国際的な機関のすべてによる政治的、社会的、技術的な対応が必要となっている」と指摘している。

IWSでの資料によると、中東と北アフリカ地域は、世界で最も水の枯渇した地域である。同地域には世界人口の6.3 %の人が住んでいるのにもかかわらず、その淡水量は全世界の淡水量の1.4 %に留まる。同地域の政府は、たえず市民に節水するよう警告しており、浪費を抑制するため水道料金を値上げしているところもある。しかし、人々が仕事を求めて都心に移動するので、水と電気の需要は、とどまるところを知らない。この両者は、アブダビやカタールのドーハなどの湾岸地域の都市が依存している淡水化施設を運転するのに欠くことのできないものである。UAEの飲料水の90 %を超える量は、淡水化施設で生産されている。

アブダビの多角的な再生可能エネルギー会社のMasdar社の最高経営責任者Sultan Ahmed al-Jaber氏は、IWSと同時に開催されたエネルギーに関するサミットであるWFESにおいて「5番目に大きい確認石油埋蔵量があるUAEでは、指導者たちは水が石油よりもっと重要と考えている。水とエネルギーについては、世界の指導者らに、緊急に両者が相互依存関係にあることを認めてもらわなければならない」と指摘した。

同氏はさらに、「世界のエネルギーの約7 %は、水をくみ、処理し、配るのに使われており、いっぽう世界の水のほぼ半分は、エネルギー資源を取りだし、発電するのに使われている。世界の石油供給量の20 %と世界の海水淡水化生産量のほぼ50 %を占めている湾岸地域では、水とエネルギーの関係は、さらにきわめて重要である。エネルギー資源と水資源の持続可能な管理には、必要な規則や政策を作り出し、官民の協力を築き、真の解決策を実現するのに必要な投資を促進することが必要である」と述べた。

IWSで、al-Jaber氏は、再生可能エネルギーで動かすことができる先端的なエネルギー効率の良い海水淡水化技術を開発するためにMasdar社が試験的なプログラムを立ち上げることを発表した。同社は、2015年末までに3回試験的なプロジェクトを実施する計画で、技術的な協力者を求めている。

al-Jaber氏は、新しく発表されたアラブ地域における気候変動の影響を見きわめた世界銀行の報告書Adaptation to Changing Climate in the Arab Countries(アラブ諸国における気候変動への適応)の中の意見に同意している。報告書は、水が農村地域と都市地域の両方で深刻さを増す問題となると指摘している。報告書によれば、エジプト、イラク、サウジアラビア、スーダン以外のすべてのアラブ諸国は慢性的な水不足に悩まされ、半数を超える国において「絶対的な水不足」のしきい値が下回っている。現在、同地域は需要が供給を上回る状況にあり、人口増加および1人当たりの水使用量が増加するのに伴い、需要は2045年までにさらに60 %増加すると予測がなされているという。

報告書では、すでに中東や北アフリカ地域で起こっている気候変動の社会的、経済的、環境的な状況に対処するために統合的アプローチを進めるよう政策立案者に求めている。