Lockheed Martin、淡水化に使えるグラフェン膜の特許を取得

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安全保障や航空宇宙など、多くの分野での最新技術の研究開発で知られるLockheed Martinが、新発明の「Perforene膜」の特許を取得したことを2013年3月18日に明らかにした。この膜は分子レベルの濾過を可能にするもので、海水の淡水化に利用でき、増大する世界の飲用水需要を満たすのに役立てることができる。

グラフェン使用で強度と効率が飛躍的に向上

Lockheed Martinの説明によると、このPerforene膜は1原子の厚さのグラフェン・シートでできており、水分子はかんたんに通すが、ナトリウム・イオンや塩素イオンなど、溶解している塩は炭素の網に捕えられて通り抜けることができない。グラフェン膜には、最大1ナノメートルの孔が穿ってある。孔はイオンの透過を阻む程度に小さいが、目詰まりが少なく、水分子の透過性能が従来の膜と比べて大幅に改善されている。
これまでの海水淡水化では、塩分を含む水に高圧をかけて何段階ものフィルターを通すか、あるいは水を加熱してその蒸気をつかまえることで淡水を得ていた。しかし、これらの方法はどちらも、圧力や熱が必要なため、多大なエネルギーを要する。それにひきかえ、Perforene膜によるフィルターは、Lockheed MartinのJohn Stetsonエンジニアによれば現在市場にある最良のものと比べて厚さが500分の1しかなく、しかも強さは1000倍もある。薄いのに強さと耐久性があるのは、1原子の厚さしかないグラフェンの構造によるものと考えることができ、このことが、逆浸透に頼るところの大きい他の淡水化法と比べてPerforene膜をきわめて効果的でずっと安価なものにしている。

2014年か2015年には市場に

Lockheed MartinのRay O. Johnson副社長兼最高技術責任者によれば、このPerforene膜は、いくつかの地域における人口増と極端な水不足によって引き起こされる全地球的な水管理の問題への「簡単であまり費用のかからない」解決策になるという。Johnson副社長はまた、今後数十年にわたって、きれいな水へのアクセスがきわめて重要な課題になり、その課題に取り組む上での鍵となる技術をLockheed Martinが手にした可能性があると述べている。
同社はPerforene膜の工業生産のプロセスを開発中であり、現在、商業化のパートナーをさがしていることを明らかにした。報道によると、Perforene膜がフィルター用途で市場に出るのは2014年か2015年になる見込みだという。

EnviXコメント

グラフェン膜を用いた淡水化技術については、EWBJ43号「米国MITの研究者、RO膜をはるかにしのぐ水透過性を持つ脱塩膜の可能性を確認」でも報告している。こちらは、MITの材料科学工学科(Department of Material Science and Technology)のJeffrey C. Grossman准教授らのグループが発表した論文*で、コンピュータシミュレーションを用いて、グラフェン膜の有用性を示している。この成果は、スミソニアン協会が発行する米国の月刊誌「スミソニアン・マガジン」にて、2012年の注目科学ニュースの中でトップ5に選ばれるほど注目を集めた。

また、欧州でも素材としてのグラフェンに熱い視線が注がれている。欧州委員会が2013年1月に発表したFuture and Emerging Technologies(FET)の2つの研究分野のひとつとして、グラフェンの研究が選ばれた(ちなみにもう1つは脳の研究である)。これにより、今後10年間で総額5億ユーロ(約655億円)の研究助成金が投資される予定である。さらに、ほぼ同時期に英国ケンブリッジ大学からは、2500万ポンド(約38億円)を投じてグラフェン研究センターの開設が発表された。欧州でのこのような動きは淡水化にこだわったものではないが、非常に興味深い動向である。

今回Lockheed Martinが発表した “Perforene” であるが、その開発の経緯や今後の予定については詳細が不明である。上述しているが、注目すべき点としては以下が挙げられる。

  • 現在、工業生産のプロセスを開発中
  • 商業化に向けたパートナーを探索中
  • 市場に出るのは2014年~2015年になる見通し

Lockheed Martinによる今後の展開はもちろんのこと、グラフェン膜による淡水化に関しては随時その動向を報告していく。

* David Cohen-Tanugi and Jeffrey C. Grossman, 2012: Water Desalination across Nanoporous Graphene, Nano Letters
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/nl3012853

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