GE、産業向け水処理に重点――GE Power & WaterのMarkhoff水・プロセス技術部門CEOが明かす戦略

GEは、4年前に電力部門と水部門を統合して以来ずっと、産業向け水処理の顧客へのアクセスのよさを最大限に活用してきた。以下では、GE Power & Waterの水・プロセス技術部門で社長兼CEOを務めるHeiner Markhoffが語った同社の戦略について紹介する。

――GEはいまでも、自社をEPC(設計・調達・建設)請負会社というよりむしろ技術サプライヤーと見ているのですか?

Markhoff:われわれのいちばんの使命は、さまざまな製品や技術を提供して、ますます難しくなりつつある水の問題に顧客が立ち向かっていくのをお手伝いすることだと考えています。なかでも、いろいろな問題のある水をより簡単でより効果的なシステムで処理することを可能にするもっとしっかりした装置と化学製品、それに、水の回収率やリサイクル率を向上させることのできる技術が、われわれが最も重点を置いている分野です。

――水と電力の部門が統合されてGE Power & Waterが誕生したのは2008年のことですが、そのことが今日の成長にどのように影響していますか?

Markhoff:GE Power & Waterのなかでわれわれは独立した部門として動いていますが、それでも、電力業界のなかでのポジションをうまく活用できる立場にあります。また、電力サイドのプロジェクトであっても、そこに水がかかわっているときは、われわれは水処理技術のプロバイダーとして初期の段階から関与します。市場におけるこのようなシナジー効果を、われわれは活用しているのです。同時にまた、おもてには出てこないメリットもいくつかあります。

――産業向けの水処理部門は、GE Waterの事業のなかで伝統的に大きな部分を占めていました。これはいまでも同じなのでしょうか? もし変化しているとしたら、それはどのような、また、何をめざしての変化なのでしょうか?

Markhoff:産業向けの水ビジネスがわれわれにとってひとつの大きな重点部門であることに変わりはありません。水不足、規制、それに新しい技術が、この部門でのいちじるしい成長の原動力となっています。われわれは、非在来型燃料、精製、石油・ガス、鉱業、食品・飲料、半導体など、多くの分野に力を注いでいます。われわれの専門技術は、オイルサンドの水蒸気支援重力排油(SAGD)法のような用途にも対応できるタフなものです。われわれは、オーストラリアのコール・シーム・ガスや、世界中の既存の油田における石油増進回収、精製施設での廃水処理など、過酷な条件下の大規模プロジェクトを、すでにいくつかこなしてきました。
他方、われわれは半導体用の超純水や、食品・飲料業界向けの原料水などの処理もおこなっています。さらに、水銀やセレンなどの重金属をさまざまな技術によって処理することもできます。これは世界中で急速に伸びている分野で、われわれはこの分野で2桁の成長をしています。われわれには、化学製品、装置、サービスなどを提供する強力なポートフォリオがあります。世界クラスの膜と濾過製品(UF、RO、フィルター、電気的分離)、熱的ソリューション(蒸発装置と結晶化装置)、移動式トレーラーがあり、また、BOO(建設・所有・運営)方式のプロジェクトを実施することもでき、さらには、水の不純物を検出する分析機器も持っています。

――サービス・プロバイダーから聞いたところでは、産業用水の市場がきわめて重要になってきたということですが、この市場にはどのような変化が起きているのでしょうか?

Markhoff:この部門はすばらしい勢いで成長しています。われわれは、この市場で有利な位置にいます。特に、オイルサンドの場合のように技術的に難しい分野での水再利用についてそれが言えます。成長がいちじるしいのは、中国、インド、オーストラリアなど、水が不足している地域です。規制、水不足、それに水処理能力が、この成長の原動力になっています。世界的に見ると、われわれは多くの地域で着実に成長しています。たとえばオーストラリアではコール・シーム・ガスを採掘することでガスの生産が伸びていますが、われわれはそこで発生する水を処理して再利用可能な水質にすることで、規制をクリアし、水の不足している地域に水を供給しています。
中国は規制が大きな成長の原動力となっているところで、そこでは、CTC(coal to chemicals:石炭を原料とした化学品生産)が、われわれのさまざまな製品を使ってすばらしいソリューションを提供できる分野のひとつになっています。インドでは、廃液排出ゼロ(ZLD)技術をもっていないと事業の拡張ができない地域が多いのですが、われわれは最近、鉄鋼と化学業界から大規模なプロジェクトをいくつか受注しました。ロシアでは、大規模精製施設の仕事をいくつか受注しましたが、これも、いちばんの原動力となったのは厳しい規制です。カナダでわれわれの事業が大きく伸びているのはオイルサンドの関連で、条件の厳しいSAGDの現場に、限外濾過(UF)による前処理、逆浸透(RO)技術、それに蒸発装置と結晶化装置で対応しています。

――GEはこれまで、UFと膜バイオリアクター(MBR)の技術に投資してきましたが、その成果について教えてください。

Markhoff:われわれのポートフォリオにはきわめて強力なUFとMBRのラインナップがあります。この関連のビジネスはこの数年間、順調に伸びてきました。われわれはこの分野に百万を超える膜を提供し、何百万ガロンもの水と廃水の処理をおこなっています。世界中で最大級の施設の多くがわれわれの技術を利用しています。
われわれは最近、LEAP MBRという新製品を発売しました。これは、市場にある従来のMBRよりもエネルギー効率が25%すぐれています。価格面でも、ライフサイクル全体を通して見れば従来品にひけをとりませんし、排出水の質もよく、また、設置面積もずっと小さくて済みます。このため、従来の処理プラントの改善に適していますし、同じ設置面積を使ってより低コストでより多くの水を生産することができます。いまでは多くの大都市が、従来の方法よりMBRを使ったほうが経済的に有利であることを理解しはじめています。
また、浸漬型のUF製品を補完するものとして、加圧型のUF製品も売り出しました。これはこの数年で大きく伸びています。

――水圧破砕の廃水のリサイクルについての進展状況はいかがでしょう?

Markhoff:その市場にわれわれが提供することのできるソリューションがいろいろあります。アメリカにおけるこの分野の水関連では、水処理というよりはむしろ水の輸送が依然として問題になっています。つまり、規制が重要な役割をはたしているわけで、規制が強化されていけば、水技術への需要も増してくるでしょう。これはきわめて興味深い分野で、ここに使うことのできる技術はそろっています。

――この分野には、水ビジネス企業にとってどのような可能性があるのでしょうか?

Markhoff:水技術にとってのこの分野の可能性といえば、水を再利用したり、必要なレベルまで水をきれいにしたりするためのソリューションを提供できることです。われわれには、すぐにでも現場に投入できる技術がそろっていますし、また、すでにそうした技術を使っているところもあります。

――装置のメーカーでありサプライヤーでもあるGEとしては、Siemensが水処理事業を売却するというニュースをどのように受けとめていますか?

Markhoff:わたしに言えるのは、それはSiemensが自社のポートフォリオについてくだす意思決定だということですが、その意思決定についてどうこう言うことはできません。

――GEはこれから5年ほどのあいだにどのような技術を開発しようとしているのでしょうか?

Markhoff:どういう技術をどの分野にということで言えば、水の再利用、特に産業用水の再利用の技術や、処理のきわめて困難な水を扱う技術をさらに前進させるための投資は今後もつづけていきます。LEAP MBRのようなエネルギー効率を改善するソリューションにも、ひきつづき投資していくつもりです。
前回のシンガポール国際水週間で、われわれはIPER(統合ポンプ・エネルギー回収)システムを発表しました。これは、淡水化のエネルギー使用量を大幅に減らすことのできる技術です。こうしたものが、技術という観点から見た今後のわれわれの重点分野のなかに含まれています。また、市場に関して言えば、われわれは自治体向けの市場にも産業界向けの市場にも、ともに積極的に取り組んでいきます。われわれは、化学製品をベースにして、それと同時にGEの一部であるという強みも生かして、広範な顧客にアプローチしていくことができます。

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