ADB、アジア太平洋地域の水の安全保障に関する報告書を公表――インドなど8か国が危機的水準と評価

アジア開発銀行(ADB)は、2013年3月13日、Asian Water Development Outlook 2013 – Measuring Water Security in Asia and the Pacificと題したアジア太平洋地域の水の安全保障に関する報告書(以下、本報告書)を公表した。本報告書は、アジア太平洋地域の国別の水の安全保障を定量的かつ総合的に分析したものである。家庭での水問題から水関連の災害まで、幅広い分野の水危機を取り上げ、複数の指標を用いて全49か国を評価している。

ADBによると、時代遅れの政策や制度も相まっており、現在の投資規模では将来の水の安全保障を確かなものにすることは難しいという。また本報告書では、廃水の再利用などを含む、水資源のより効率的な利用の重要性についても強調している。その他、効率化を図るための上水道の民営化、下水道整備への投資、農業用水および工業用水の効率的な利用の促進、地下水利用に関する新たな規制の導入、河川の流域管理の強化、災害リスク管理の向上などが水の未来にとって必要不可欠であると主張されている。

インドなど8か国が最も危険度が高いと評価

対象となった49か国のうち、インド、パキスタン、カンボジアを含む8か国が最も危険水準の高い国と評価された。この理由としては、例えば上下水道の普及率の低さが挙げられている。インドにおける上水道および下水道の普及率はそれぞれ23%と34%、パキスタンでは36%と48%、カンボジアは17%と31%と報告されている。

上下水道の普及と水質汚染の抑制

アジア太平洋地域全体での上下水道の普及率は40%以下であり、特に、南アジアおよび太平洋島嶼国で普及率が低い。さらに、下水は未処理もしくは一部処理された状態で、河川や湖などに放出されているケースが多く、水質汚染の原因となっている。南アジアでは、処理されている下水はわずかに22%であった。

上で挙げた、地域間での上下水道普及率の急激な格差拡大、河川などでの汚染の増大、これら2つの点が本報告書では強調されている。これは、近年高まりつつある人口増加、都市化、地下水の枯渇、気候変動などの影響を緩和するためには、上記2つの点を改善する必要があるからだ。

ADBの報告書Asian Water Development Outlook 2013 – Measuring Water Security in Asia and the Pacificは以下のURLからダウンロード可能。
http://www.adb.org/sites/default/files/pub/2013/asian-water-development-outlook-2013.pdf