欧州委員会のコンセッション指令から水道事業を除外する判断に民間水道事業者団体が反発

2013年6月26日、国際民間水道事業者連盟AquaFedがプレスリリースを発表し*1、近く制定される予定の「コンセッション指令」の適用対象事業から水道事業を外す意向を示した欧州委員会のミシェル・バルニエ委員の6月21日付け発表*2を批判した。

EUの「コンセッション指令」は、PPPという新しい官民協力の形態が導入され、さまざまな公共サービス部門に民間企業が参入しようとしているため、対応を迫られている地方自治体のためにEU全体で一度、公共サービスの「コンセッション」(民間への営業許可、譲許)の手続きや法的責任関係などを整理しておこうとしてまとめられているもの。

しかし前記のバルニエ委員の声明によると、それが公共サービスの民営化を求めるものだと勘違いされ、欧州市民イニシアティブ(ECI)*3の仕組みを利用して、水道事業の民営化に対して不安や怒りを抱く市民150万人の署名が集められたという。このため、そうした声に配慮し、水道事業についてはこの指令の対象から除外することが妥当と判断したことがバルニエ委員の声明では述べられている。

AquaFedの反論

だが、それに対して、今度は民間水道事業者の集まりであるAquaFedの側から「指令は公共サービスの民営化を求めているものではないのに、欧州委員会が市民の声に配慮して水道事業だけをPPPの対象から外すのはおかしい」との批判が上がったわけである。

AquaFedはさらにECIの署名についても疑問を呈しており、「署名の80パーセント近く(約130万人分)はドイツで集められており、英国、スペイン、フランス、チェコなど、すでに水道事業の民営化が進んでいる国では、ほとんど市民が今回の指令に関心を示していないことに注目すべきだ」と指摘している。要するに、「今回のECIの署名活動は明らかにドイツのロビイ活動であり、EU市民の声を正確に反映しているとは考えられない。だから、コンセッション指令の対象から水道事業を除外するのは正当化されない」というわけである。

「この指令が制定されると水道事業が強制的に民営化されるという誤った情報を、ドイツのロビイストたちは国内で伝えて不安をあおることによって水道事業の透明性向上に反する行動をとっている」このようにAquaFedは批判している。

*1 AquaFedの発表文は以下のURLより閲覧可能。
http://www.aquafed.org/pages/fr/admin/UserFiles/pdf/2013-06-26_ConcessionsDirective_Exclusion_PR_EN.pdf
*2 ミシェル・バルニエ委員の発表は以下のURLより閲覧可能。
http://ec.europa.eu/commission_2010-2014/barnier/docs/speeches/20130621_water-out-of-concessions-directive_en.pdf
*3 一定数のEU加盟国の市民の署名を集めれば欧州委員会の政策に対して影響を及ぼすことができる制度。

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