シンガポール、NTU水研究所が新たに3年間で1億3200万SGDの研究資金を獲得

2013年5月4日に現地で報じられたところによると、シンガポール南洋工科大学(NTU)の水研究所は、2016年までの3年間で新たに1億3200万シンガポールドル(SGD、およそ101億円)の資金を獲得することが明らかになった。今回決定した資金の総額は2016年末までにおよそ4億SGD(約304億円)に達するという。この資金は政府のほか多国籍企業や地域の中小企業から提供され、産業界とのより緊密な連携を示唆するものとなる。

FO膜やバイオミメティク膜など新しい膜の開発に集中

2008年に設立されたこの南洋環境・水研究所(NEWRI)は、シンガポール産業界において、より経済的でより効果の高い浄水・廃水・廃棄物管理技術に対する需要が高まっている状況を受けて創設された。NEWRIは今後3年間で正浸透(FO:Forward Osmosis)*1膜およびバイオミメティク(生物模倣)*2膜の開発のほか、より多くのエネルギーを回収できる廃水のバイオ処理技術、光学的方法で汚染物質や病原体を迅速かつリアルタイムで検出する技術の開発に集中するという。NEWRIのExecutive Director、Ng Wun Jern教授は次のように語っている。「皮肉なことですが、廃水処理はエネルギーを必要とするので、現実的には環境への影響は避けられません。つまり、もし廃水を処理する際に多大なエネルギーを消費するとしたら、それはエネルギーフットプリントの点で悪影響をもたらしうるのです」さらにJern教授は、理想的には産業廃水からのエネルギー「回収」が実現できれば良いと続けた。

産学の連携を推進

NEWRIがCleanTech One*3に新たに研究施設をオープンするにあたり、環境・水資源大臣のVivian Balakrishnan博士は、産学の連携が「現実の需要、必要性がそこに存在する環境で」実現したことは「戦略的脆弱性であったものを世界的チャンスに変える」一例であると話した。浄水技術における新たな潮流は、次世代膜といわれるタンパク質ベースのバイオミメティク膜の改良をどのように進めるかである。Balakrishnan博士はまた、「今後、世界はますます多くの自然界を模倣したシステムに占められていくだろう」と語り、さらにこうした生物模倣システムは「おそらく10~15年のうちに実用化できるだろう」との見通しを示した。

*1 正浸透法(FO)とは、海水中の水分子がFO膜を通してより濃度の高い別の溶液のほうに自然に移動する原理を利用した技術。溶液に水分子が移動した後、何らかの方法で溶質を分離して淡水を取り出す。*2 バイオミメティクとは、生物が持つ優れた機能を人工的に実現しようとするもの。その例としてサメ肌を模倣して乱流を抑制する効果を得た水着や蓮の葉の表面を模倣した超撥水性素材などがある。*3 シンガポール初のエコビジネス・パーク”CleanTech Park”内に建てられたエコビジネスのアイコン的ビル。環境関連企業がテナントとして入る。

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