水銀規制や水質規制が世界の活性炭市場の成長要因に

市場調査の大手として知られるGlobal Industry Analysts, Inc.(GIA)は2013年11月25日、世界の活性炭市場に関する報告書を発表した。それによると、世界の活性炭需要は、厳しい環境規制、特にアメリカにおける規制に後押しされて、2018年には187万トンに達するという。

活性炭は、水処理、空気浄化、食品・飲料加工から、医療・医薬品や自動車の排気キャニスターにいたるまでの無数の用途で、不純物を吸着する目的で使われている。活性炭の最も一般的な形状は粉末状または粒状で、石炭、ヤシ殻、ピート、木材など、炭素を多く含む材料からつくることができる。
粉末状活性炭は、アメリカにおいては水銀・大気汚染物質基準が市場拡大に寄与するものと考えられている。この基準は、活性炭注入システムの設置を奨励している。粒状活性炭は、同じくアメリカにおいて消毒剤・消毒副生成物規則のステージ2の施行によって市場が拡大すると見られている。活性炭市場はまた、2013年10月に日本における国際会合で採択・署名された水俣条約の恩恵もうけると予想されている。この条約は、水銀の放出と排出に関する問題への取組を特に強調している。

すぐれた吸着力がもたらす多様な用途

活性炭は、そのきわめてすぐれた吸着能力ゆえに、水質汚染や大気汚染の最も効果的な解決手段のひとつとして注目されてきた。水銀規制はアメリカにおいては活性炭の需要を喚起する上で大きな役割をはたすと考えられており、中国では、第12次5ヵ年計画の目標に掲げられている水質と大気質の改善がますます注目され、これが市場の成長を後押ししている。医学における利用の広がりや、甘味料、飲料、および食用油の生産量の増加も、市場の成長の要因となっている。人口増と、高度な廃棄物処分への要求の高まりが、有害廃棄物や医療廃棄物の焼却の分野で活性炭の大きな需要を生みそうだ。活性炭市場の主要な成長要因は政府と環境規制であり、2007年から2009年にかけての経済危機においても世界市場が大きく鈍化することはなかった。

排気浄化も、活性炭市場成長の鍵を握る分野として急速に注目を集めつつある。この分野の成長は、特にアメリカにおいて、石炭火力発電所などの施設における水銀除去への要求の高まりが大きく貢献している。途上国で着実に伸びている食品・飲料部門も、市場の将来を明るくしている。自動車生産の増大と厳しい排ガス規制も、排気キャニスターやクリーン・エア・フィルタの利用を増し、活性炭の需要増の要因となっている。

再活性化活性炭に注目

現在、活性炭の原材料の供給が逼迫しており、それをうけてバージン活性炭の価格が上昇している。このため、向こう数年間は再活性化活性炭の需要が着実に増すと見込まれている。特に、粒状活性炭はその再生可能性ゆえに、このトレンドの恩恵をうけると考えられる。石油精製施設においては、気相処理、地下水浄化、および廃水処理の過程で揮発性有機化合物(VOC)の濃度を低下させるのに、再活性化活性炭がよく用いられている。再活性化活性炭の需要はまた、自治体や産業界の、コストを節減しつつカーボン・フットプリントを減らそうとする動きが強まるにつれて増大するものと予想されている。

市場規模ではアジア太平洋地域、成長速度ではアメリカ

活性炭に関するGIAの市場調査報告書は、アジア太平洋地域が世界で最大の活性炭市場であるとしている。これは、増大する人口、都市化の加速、それに急速な工業化が、必然的にさまざまな用途での活性炭の需要を増すためである。アメリカは、大気汚染と水質汚染に関する厳しい規制・基準に牽引され、この調査の分析対象期間の活性炭市場のCAGR(年平均成長率)は13.2%と予想されている。これは世界で最も急速な成長である。

なお、この報告書が取り上げている活性炭関連のおもな企業は、ADA Carbon Solutions、Cabot Norit Activated Carbon、Calgon Carbon Corporation、Carbon Activated Corp、The Clarimex Group、Haycarb PLC、クラレケミカル、MeadWestvaco Corporationなどである。

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