米国、水インフラ資金・改革法案に州レベルから反対の声

2013年10月23日、米下院はおおかたの予想通り、「2013年の水資源改善・開発法案」を圧倒的賛成多数で可決し、舞台は上院法案と下院法案の摺り合わせをおこなう両院協議会の場に移った。そこでは、上下水道関連業界が成立を望んでいる「水インフラ資金・改革法案」(WIFIA:Water Infrastructure Finance and Innovation Act)の内容を盛り込むかどうかが焦点となりそうだ。
ところでこのWIFIAには、一部から反対の声があがっているが、これは完全に予想された展開とは言いがたい。
上院を通過した「2013年の水資源開発法案」には、第X章としてWIFIAが含まれている。しかし、下院を通過した「2013年の水資源改善・開発法案」には、WIFIAは含まれていない。下院のリーダーらが、法案にWIFIAを含めると水質浄化法との兼ね合いが問題になるところまで範囲が広がり、そのために本会議の審議で環境面でのさまざまな修正の余地が生じることをおそれたためである。だが、上院法案にWIFIAが含まれている以上、両院協議会で最終法案にWIFIAを含めて上下両院に送り返す道も残されている。

法案全体とWIFIAの概要

WIFIAを含めるか否かにかかわらず、上院法案も下院法案も、ともに巨額の水インフラプロジェクトの推進に関するもので、港湾、水路、治水インフラなどの多くのプロジェクトに陸軍工兵団の関与を認めている。
問題となっているWIFIAは、2000万ドル(約21億円)(または利用者が2万5000人以下の上下水道システムについては500万ドル(約5億2000万円))以上の上下水道インフラプロジェクトに対して環境保護庁(EPA)と陸軍工兵団がそれぞれ低利の融資をおこなうことを可能にする5000万ドル(約52億円)規模の期間5年のパイロット・プログラムの創設を定めるものである。ただし、このパイロット・プログラムは、同じく水インフラへの融資に使える枠組である州リボルビング基金(SRF)とは別個のものとなる。
このWIFIAについて、アメリカ水道協会(AWWA)、大都市下水局協議会(AMWA)、およびアメリカ水環境連盟(WEF)は賛意を表明している。

反対派はSRFの拡充を主張

いっぽう、WIFIAに反対する団体ら――水質浄化担当官協会、州飲料水担当官協会、州政府環境機関協議会、公的インフラ金融機関協議会、および地下水保護協議会――は、反対の意思を示す書簡を連名で上下両院の主要議員らに送った。
この書簡で、これら団体はこう述べている。「わが国の上下水道インフラの需要は莫大で、環境保護庁の最新の推計によると向こう20年間に7000億ドル(約73兆円)が必要になる。国、州、および地方のレベルで予算が限られているこの時代にあってこうした需要に応えるには、斬新で革新的な思考が求められる」
書簡はさらにこうつづけている。「一部の方々が提唱しているような、上下水道プロジェクトのために連邦が管理するスタンドアロン型のインフラ融資プログラムを創設することは、われわれが支持するアプローチではない。上下水道のインフラ需要をよりじゅうぶんに満たす国家プログラムを望む声があることは、われわれにも理解できるが……」
しかし……と書簡はつづけ、最もよい方法は州が管理する水質浄化と上水道整備のための州リボルビング基金(SRF)のこれまでの成功の上に立った取組であることを、つぎのように説明している。
「SRFは地方のインフラ需要に応えるためのきわめて効果的なモデルである。州によるこうした基金の管理は、インフラ整備に不可欠な財源を、それを切実に必要としているコミュニティに移すための実証済みのメカニズムであり、SRFの開始(水質浄化SRFは1987年、上水道整備SRFは1996年)以来、4万3134件を超える融資が実行され、連邦政府と州政府を合わせて582億7000万ドル(約6兆750億円)の資金が提供された」

書簡はまた、WIFIAが提案されたきっかけは、きわめて大規模なインフラ・プロジェクトのための資金提供の必要性と、大規模プロジェクトへの融資を効率化しなければならないという認識だとして、つぎのように述べている。「このような問題は解決可能である。われわれは、ふたつのSRFの再授権と、同時にまた過去数年にわたって学んできた教訓を生かしてこれらSRFをすべての融資先にとってさらに効率的で効果的なものにするための微調整をめざす最近の議会の動きを全面的に支持する」
これについて、書簡はつぎのように説明している。「われわれは、現在の財政状況において、連邦政府が管理する別個の大規模なプログラムを議会が支持することが、けっきょくはSRFへの議会の支持を後退させることになり、ひいてはインフラへの資金投入のアプローチがばらばらなものになり、環境と健康の保護を根底から危うくするのではないかと強く懸念している」
書簡はさらにこうつづけている。「上下水道システムへの資金需要に最もよく応えるために、われわれは、議会が各州のSRFプログラムへの再授権によって、大規模な上下水道にも小規模な上下水道にもSRFを通した融資をおこなうことを可能にし、現在各州にある融資のノウハウを活用できるようにすることをつつしんで要請する」

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