米国デトロイト市、上下水道民営化の提案を募集

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財政破綻したデトロイト市は、同市とその近郊地域をカバーする上下水道システムを近郊自治体にリースする交渉をつづけてきたが、それが行き詰まったいま、上下水道事業の運営を委託し、可能であれば上下水道事業全体を買い取ってもらうことも視野に、民間企業からの提案を募集している。
これは、負債削減計画を最終的に詰めているデトロイト市が資産の処分を検討するなかで持ち上がってきた動きで、これが実現すれば、アメリカでも最大級の水道システムがすくなくとも部分的には民営化されることになる。同市の負債削減計画は、この春に債権者による投票にかけられることになっている。

緊急財務管理者はこれまでリースを模索

2014年3月24日に保守系のシンクタンクManhattan Institute for Policy Researchの主催によりニューヨークで催されたパネル・ディスカッションにおいて、デトロイト市のKevyn Orr緊急財務管理者――州知事に任命されたいわば破産管財人――は、「われわれには水インフラが必要だ」と述べた。
2013年3月の就任から1年を経たOrr緊急財務管理者は、これまで、ミシガン州の人口の40%ちかくにサービスを提供しているデトロイト上下水道局を売り払ってしまうことは考えにくいと述べていた。近郊地域も含む水道公社を新設してそれに水道システムをリースすれば、年間4700万ドル(約49億円)が市に毎年はいってくることになり、そうした計画のほうが好ましいと考えていたのだ。
しかし、近郊自治体の首長らは、システムの改善費用の負担が将来生じかねないことや、未払い水道料金の問題があって、これまでのところ、このリースの話に乗りかねている。この問題に詳しいある人物によると、現在の市有の水道システムが今後もデトロイト市の一部局として運営されつづけることもありうるという。

大規模民営化のテスト・ケースとなるか

ミシガン州南東部一帯のこの上下水道サービスの民営化は、実現すれば、全米で老朽化が進む水道システムに効率改善と必要なグレードアップを民間部門がもたらすと主張する人々にとっては、ひとつのテスト・ケースになりうる。逆に、こうした民営化の動きに反対する人々は、料金の値上げを危惧するとともに、公的機関を利潤追求の企業に変えてよいのかという疑問を呈している。
1990年代から2000年代にかけて、民営化に向けたひとつのうねりがあったにもかかわらず、全米の水道事業のおよそ85%はいまだに公営である。また、たとえばアトランタ市は、1999年に水道を民営化したが、その後、コストの削減がもとで利用者の不満が高まり、水道事業はふたたび公営にもどった。
カリフォルニア州で水道民営化などの調査・研究をおこなっている非営利組織、Pacific InstituteのPeter Gleick会長は、「デトロイトが民営化に踏み切れば、この10年間で最初の大規模な官民協力の取組になるだろう」と述べている。

デトロイトの水道が直面するさまざまな課題

デトロイト上下水道局は、デトロイト市および周辺7郡の127のコミュニティに日量約6億ガロンの水を供給している。
しかし、デトロイト市そのものと同様、水道局もいくつもの課題に直面してきた。2013年までの数十年間、デトロイト上下水道局は水質浄化法違反のかどで連邦裁判所の監視下に置かれていた。2012年には同水道局の前局長が、Kwame Kilpatrick前市長の汚職事件で自分も共謀に加わったとして有罪を認めた。また、市当局によると、デトロイト市の数千世帯が水道料金を滞納しており、その総額は1億ドル(約100億円)を超えている。彼らは、いつ水道をとめられてもおかしくない状態に置かれている。

デトロイト市は2014年3月21日に、上下水道システムを買ってくれそうな企業に21ページにおよぶ提案要請書*を送ったが、そこには、支出を超える収入のある水道局の姿が描かれている。しかしその水道局は、水道本管を交換し、水処理プラントとポンプ場をグレードアップするための5年計画の設備投資プロジェクトを抱えている。このプロジェクトの費用は、5年間で累計約14億ドル(約1400億円)と見積もられている(下図)。

* City of Detroit, REQUEST FOR INFORMATION For Potential Operators of Detroit Water and Sewage Disposal Systems for Detroit Water and Sewerage Department
http://www.detroitmi.gov/Portals/0/docs/EM/Reports/DWSD%20RFI%20March%202014.pdf

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図 デトロイト市の上下水道における設備改修資金の予測
(出典:City of Detroit, REQUEST FOR INFORMATION For Potential Operators of Detroit Water and Sewage Disposal Systems for Detroit Water and Sewerage Department)

デトロイトの上下水道事業にはまた、2014年3月15日現在、およそ57億ドル(約5700億円)(上水道で25億ドル、下水道で32億ドル)の負債がある。水道事業を長期リースまたは売却する場合には、市はリース先または買い手に、そのリースまたは売却が原因となって公債による借入が免税の特典を失ったり州の融資が打ち切られたりしたときにそれに対処して負債をなくしていく方法を提案してもらいたいと考えている。リース先または買い手にはさらに、水道局の現在および将来の退職者への年金支払い義務ものしかかってくる。その額は向こう10年間で6億7500万ドル(約690億円)にのぼると市は見積もっている。
提案要請書のなかでOrr緊急財務管理者は、「長期リースとコンセッション契約または売却との組み合わせなどの代替策の提案も検討対象とする」としている。
また、提案要請書は利用者の保護についても規定しており、水道事業の運営者は最初の10年間、料金を4%以上値上げしてはならないことになっている。

デトロイトではいま、市全体を通して従来の市民サービスのアウトソーシングがはじまっている。市のコンベンション・センターは準公営の公社と民間の管理会社が運営しているし、また、別の公社が市内の公共照明業務を市から引き継いでいる。2014年2月には、デトロイト市議会が一般廃棄物収集業務の民営化を決めた。これはサービス改善のためであるが、コストの節減は見込まれていない。

なお、デトロイト水道局の基本データは以下の通りである。

従業員 1600人
上水道サービス提供範囲 ・1079平方マイル
・デトロイト市およびその周辺地域を合わせて400万人に供給(ミシガン州の約40%に相当)
下水道サービス提供範囲 ・946平方マイル
・人口カバー率は、ミシガン州の全人口の約35%
売上推移 201405048_2

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