インドネシア・ジャカルタの水道民営化はきれいな水への権利を阻害――イギリスの学者が法廷証言

インドネシアの首都ジャカルタで実施されている水道事業の民営化はさまざまな議論を呼んでおり、法廷闘争にまで発展している。このほど、公共サービスを専門にしている英国の学者が法廷で証言に立ち、水道の民営化は、とりわけ、きれいな水へのアクセスに関して、政府の人権政策を妨げるものだとの意見を述べた。
証言に立ったのはロンドンのグリニッジ大学のEmanuele Lobina講師で、中央ジャカルタ地方裁判所が水道の民営化の問題を審理する2014年3月18日の公判に証人として出廷し、すでに世界中の多くの都市が民間企業との協力関係に終止符を打ち、水の供給事業を公的部門の手にとりもどしたと述べた。

低サービスや高コストなど、民営化にさまざまな問題

世界各国の水道民営化について多くの調査をかさねてきたLobina講師は、官民の契約の打ち切りにはさまざまな理由があるが、そのほとんどがサービスの質の低さや運営コストの高さと関係していると証言した。
Lobina講師はまた、「契約どおりに投資がおこなわれなかったり、賄賂が横行したりといったことも大きな要因になっている」と語り、さらに、民営化のマイナス面は高所得の国ばかりでなく、中所得や低所得の国でもあらわれていると述べた。

途上国における例として、Lobina講師は南アフリカなどのケースを挙げた。そうした国では、水道料金が高すぎて、低所得世帯には払いきれないという状況がある。Lobina講師はこう証言している。「とうとう市民訴訟が起こり、市民側が勝訴した。契約は打ち切りとなり、それまで水道を運営していた民間の事業者に対して国は補償をしなくてもよいということになった」
Lobina講師はさらに、サービスの質が低かったり運営コストが高かったりするのは民間企業に利益優先の傾向があるからだと述べた。

民営化は世界銀行が後押し

いっぽうでLobina講師は、水供給事業に依然として官民パートナーシップ(PPP)方式を採用している都市があることも指摘し、「その理由はさまざまだろうが、多くの場合、世界銀行の影響力が地方政府の意思決定を左右している」と述べた。
ジャカルタの上水道の民営化は、世界銀行のイニシアチブに後押しされたものだ。Lobina講師より前に証言したある証人によると、世界銀行はジャカルタの水道民営化のプロジェクトを提案する前に、市有の水道事業者PAM Jayaに9200万ドル(約95億円)を融資している。

契約の一方的打ち切りも視野に

この訴訟では、「水道民営化に反対するジャカルタ住民団(KMMSAJ)という市民と企業の連合団体が原告となり、PAM Jaya、PT Aetra Air Jakarta、およびPT PAM Lyonnaise Jayaのあいだの協力契約を無効にすることを訴えている。
法定での証言でLobina講師は、一方的に契約を打ち切った複数の都市の例を挙げ、そのうちいくつかの都市は補償金を支払ってでも協力関係を絶つ道を選んだとし、ジャカルタ市当局は勇気をもってこれに倣うべきだと主張した。
Lobina講師はさらに、契約を打ち切ることによって市が水道事業を引き継ぎ、ジャカルタの住民に水を直接供給することができると述べた。

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