メキシコのケレタロ州工科大学、鶏の羽のケラチンをベースとした汚水の重金属除去膜を開発

メキシコのケレタロ州工科大学(ITQ)は、鶏の羽の細かい羽毛を使った、スポンジに似たケラチンとポリウレタンの膜を開発した。開発者は、工業生産の開発に興味がある企業への技術移転の可能性を現在探っているという。

このプロジェクトの目的は、鳥の羽毛に含まれるたんぱく質のひとつであるケラチンを使って、排水に含まれる、鉛やヒ素、クロム、フェノールなどの有機化合物を除去することにあり、研究は、ケレタロ州政府の科学技術研究奨励基金の援助を受けている。ケラチンは、多くの脊椎動物が持つたんぱく質で、人においては、爪や髪、皮膚角質、体毛などに含まれている。鳥の羽の95%はケラチンで形成されており、金属を引き付け、吸収するという化学特性を持っている。

鶏の細かい羽毛を使った、丸いスポンジに似たケラチンとポリウレタンの膜は、ケレタロ州工科大学の大学院研究部のナノテクノロジー研究所で開発されたもので、羽の繊毛とポリウレタン(合成ポリマー)を混合する際の化学反応により形成される、厚さ4mm、直径4.7cmのディスク状のものである(下図)。この生物膜は、養鶏業の廃棄物として無償で調達出来る鶏の羽を使ったものであり、メキシコでは革新的なものとなっている。重金属除去は、汚水をこの膜に通すことで行われ、処理は約4時間となっている。ひとつの膜で、クロムや鉛、ヒ素を20ppm含有する水を10リットルまで浄水出来、製造は1ドル以下で出来る。

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図 ケラチンとポリウレタンで作成した膜

メキシコ水委員会(CONAGUA)の2011年版の統計報告書によると、メキシコでは年間6000m3の、工業排水が排出されており、そのうち処理されているのは年間1160m3である。重金属は、自動車部品のクロムメッキ処理や、塗料製造、皮革なめし業などの排水に含有されているが、これを全て処理するには、かなりの投資が必要となっている。

ケラチンの除去膜研究は現在最終段階にあり、このポリウレタンとケラチンの膜の工業生産に興味がある企業などの技術移転先を探している。

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