中国初の正浸透技術を用いた工業排水ゼロ実験室が開設

2014年10月22日、中国初の正浸透(FO)技術を採用した「工業排水ゼロ実験室、海水脱塩および総合利用実験室」の設立式が北京市昌平県で行われた。式典には、中国機械工業集団の陳志チーフエンジニア、中国石油化工股份有限公司(中国最大規模の石油・石油化学企業)の戴厚良シニア・バイス・プレジデント(SVP)などが出席した。同実験室は、中工国際の子会社である北京沃特爾水技術股フン有限公司(以下、沃特爾)と、中国石化撫順石油化工研究院(以下、撫研院)が共同で設立したもので、「工業排水ゼロ排出、海水脱塩および総合利用」の全プロセスシミュレーション実験または各部分の独立実験の研究ができる施設となっている。関係筋によれば、双方は技術分野での協力を展開し、石油化学分野での廃水処理におけるFO技術の応用を推進し、中国の石油化学、石炭化学工業団地での汚水処理、そして環境保護に重要な役割を果たすとみられている。

北京沃特爾水技術股フン有限公司

沃特爾は水処理ソリューションを提供する企業で、電力、石油化工、冶金、海水脱塩など幅広い分野の顧客に対応し、廃水処理、中水リサイクル(ゼロ排出)、発電所ボイラ補給水、海水脱塩などの分野における実績を有している。そのうち、内モンゴル伊泰科学集団大路石炭化学工業廃水のゼロエミッション化プロジェクトでは、石炭化学工業団地の廃水処理における典型的な技術問題を有効に解決したこともある。

関係者によれば、現在幅広く利用されている逆浸透技術と比べて、FO技術は投資コストと運営コストにおいて30%の削減が可能であるという。沃特爾社は複数の特許を獲得した石灰による前処理技術が国内で優位性を保っており、2013年に導入したFO技術が濃塩水濃縮および海水脱塩などの分野において競争力を持っている。石灰による前処理技術およびFO技術を頼りに、同実験室は石油化学、石炭化学、電力、冶金などの分野における、高COD、高塩分、高重金属濃度といった処理難度の高い廃水処理の需要者に対して経済的かつ有効な排水ゼロ・ソリューションを提供する計画である。

同時に、同実験室はFO技術を用いた海水濃縮技術の研究を展開し、低エネルギー消費型海水脱塩技術を利用し、含塩量22%を超える濃塩水を獲得することができる。これを基礎にして、濃塩水による塩工業への応用を実現し、経済的かつ有効な海水脱塩および総合利用ソリューションを提供することができる。これまで、沃特爾社は河北省黄驊市で初のFO技術を用いた海水濃縮中規模パイロットプラントを建設し、運営を開始した。これは、次の海水脱塩および総合利用実験室の研究へ信憑性のある運転データを提供する見込みである。

中国石化撫順石油化工研究院

一方で撫研院は、国内初の石油化学工業環境保護技術研究所で、中国石化環境観測総ステーションとしての役割を果たしている。同研究所は石油化学分野において複数の応用技術を有している。廃水処理に関しては、率先して含油汚水「分離-浮上-生化学」処理などの技術に取り組んでいる。石油精製所及びバイオ燃料所廃水処理、油田廃水処理、工業酸性水ストリッピング、アルカリ残渣の湿式酸化、好気性汚水処理、嫌気性汚水処理、石油精製汚水リサイクルなど30あまりの技術を開発しており、石油化学工業による汚水問題を有効に解決する能力をもっている。

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