英国CDP、ジャパン150ウォーターレポートを発表――日本企業の水リスク認識薄く

英国の非営利団体Carbon Disclosure Project(CDP)が2014年10月15日、経団連会館で、CDP 2014 日本報告会を開催し、『CDPジャパン150ウォーターレポート―水、日本企業に迫りくるリスク』を発表した(以下のリンクに、同報告書日本語版の原文掲載)。
https://www.cdp.net/CDPResults/CDP-japan-water-report-2014-japanese.pdf

「本調査からは、多くの日本企業が、直接の操業やサプライチェーンにおいて十分な量の良質な淡水が利用できることが重要であると認識している一方で、直接の操業とサプライチェーンの両方を対象として水リスクの評価を行っている企業はまだ少数派であることが明らかになった」と、報告書では結論している。

CDPは、英国FTSE Global Equity Index Seriesの500社(グローバル500)を対象に、水に関する調査を続けており、2014年調査で5回目となる。一方、同団体は初めて同年に、日本の大手企業150社を対象に、水利用情報の公開を請求した。自動車、電機、金属、食品などトップ企業が調査の対象で、サプライチェーンを含む内外の水利用の実態や、水不足に備えた対策などを聞いた。その回答期限は2014年6月30日であった。

その結果、65社(43%)から回答を得た。このほか、150社以外の18社からも、質問書に対する自主的な回答を得た。無回答もしくは無視の日本企業も非常に多かった(回答、無回答企業のリストも報告書に添付されている)。CDPのスポンサーは、米国のJPモルガン・チェースや三菱UFJフィナンシャルグループなど、世界のメガバンクが勢ぞろいしていて、CDPの調査を投資判断の際に参考にしている。

本報告書では、期日までに回答が得られた79社を対象に、分析結果を示すとともに、グローバル500の調査結果と比較して、日本企業に特有の傾向や課題を考察した。おもな結論は次のとおりである。

(1) 調査対象150社のうち、65社(43%)が質問書に回答した。この回答率は、2013年のグローバル500の回答率(60%)と比較して低い。今回の調査が、日本企業を対象に行った初めての調査であり、回答準備のできていない企業が多かったことが大きな要因と考えられる。

(2) 十分な量の良質な淡水が利用可能なことが、自社の操業にとって「不可欠」と回答したのは、日本企業の39%で、30%の企業が「重要」と回答した(下図)。業種別でみると、「生活必需品」の71%、「素材」の62%が「不可欠」と回答している一方で、「資本財・サービス」で「不可欠」と回答した企業は、17%にとどまった。

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図 自社操業における淡水利用可能の重要性に対する認識
(出典:CDPジャパン150ウォーターレポート)

(3) 47%の日本企業が、直接の操業あるいはサプライチェーンで水リスクにさらされている、と回答した(下図)。2013年のグローバル500調査(70%)と比べ、明らかに低い。

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図 水リスクに対する認識
(出典:CDPジャパン150ウォーターレポート)

(4) 56%の日本企業が、水にビジネスチャンスを見出していた。23社が「新たな製品/サービスの販売」、13社が「ブランド価値の増大」、12社が「コスト削減」を挙げた。

(5) 62%の日本企業が、水の管理をビジネス戦略に組み込んでいた。一方、サプライヤーに対して、水リスクや水使用量の報告を求めている企業は、20%にとどまった。