メキシコ国立自治大学、地熱エネルギーで稼動し、通常のものより20%効率がよい淡水化装置を開発

メキシコ国立自治大学の淡水化エンジニアリング・代替エネルギー部(iiDEA)は、100%学生による製造で、市販のものより20%効率が良い、モジュラー式の地熱を利用した淡水化装置のプロトタイプを製作した(下図)。

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降水量が殆どない、メキシコ北部カリフォルニア半島のバハカリフォルニア州では、観光地のホテルでは逆浸透法による小型の淡水化プラントが利用されているが、稼動には電力が必要である。カリフォルニア半島では、太陽熱、風力、地熱、潮力などの再生可能エネルギー源があるが、装置には地熱エネルギーが利用されている。

装置開発にあたっては、学生達はまず、どのような淡水取得方法があるか分析し、海水から発生する蒸気を凝縮する方法に目をつけ、最もシンプルな、地熱による蒸留を採用した。メキシコでは地熱のポテンシャルは大きいが、現在は発電用や温泉用にしか使われていない。バハカリフォルニア州には断層が多く、熱を発生する亀裂が無数にある。

メキシコ国立自治大学が開発したモジュラー式の淡水化装置は、熱交換により海水を蒸発させ、飲料水として使用出来るまで蒸留させるものとなっている。地熱井から出る熱水が、低圧で沸点の低いタンク内の熱交換パイプに注入され、海水がスプレーでパイプに吹き付けられて蒸発し、この蒸気を集めて蒸留するプロセスとなっている。通常海水は3万5000ppmの塩化化合物や、ナトリウム、カリウムなどを含有しているが、蒸留された水では5-10ppmとなり、農業用にはこのまま使える。飲料用としては、300-400ppmとなるまで塩分を加える必要がある。

コストに関しては、逆浸透膜法による淡水化では、1立方米あたり約1米ドルかかるが、開発した方法では地熱源はコストがかからない為、0.80米ドルとなる。また地熱の場合は太陽熱と違い24時間利用出来る点が利点となる。

ラボラトリーで試作した装置は、タンクが一つで、24時間稼動で一日400リットルの飲料水が得られるものであるが、政府の奨励による22の機関、12の教育機関、10の企業のコンソーシアムの融資により、3つのタンクの装置を製造する予定となっている。コンソーシアムのプロジェクトは4年間継続し、最終的にフィールドで稼動するプロトタイプ機を完成させることになっている。開発グループは、機械工学、化学、メカトロニクス、通信、社会学、心理学、生物学、物理学など多岐にわたる専門分野の学生より成り、技術面だけでなく、社会的、経済的、法的側面からの分析もなされている。

 

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