VeoliaとSuez、新興市場としてインドでの水ビジネスの拡大を狙う

農業と工業、都市用水で水を奪い合う状況となっているインドにおいて、欧州最大手のVeoliaとSuezが水ビジネスの拡大を狙っている。具体的に、Veoliaはインドのエネルギー・鉱業分野への処理プラントの販売拡大を狙い、Suezはインド国内企業の買収を検討している。Suezはアジア地域において5年間で10倍の成長を達成するという目標を掲げており、この買収はこの拡大計画を大きく押し進めるためのものとなる。

本国フランスでは緊縮財政により都市用水事業の利益幅が低下、海外に活路を見出す

Veolia Waterのインド法人CEO、Patrick Rousseau氏はメディアのインタビューに対し、次のように語った。「インドのような市場は我々のような企業にとって、より重要な存在となっていくことでしょう。我々はこれまでインドの地方自治体との契約にフォーカスしてきました。そして現在は、工業に注目しています。我々は企業に対話をもちかけています。」表面水と地下水の水位が低下する中、現在約6億人のインド国民が給水途絶のリスクに直面しており、これによりモディ首相の開発アジェンダの実現が危うくなっている。そしてこれは同時に14億USD(約1720億円)の廃水再利用市場が成長する兆しでもある。フランス・パリに拠点を置くVeoliaとSuezが海外における拡張を図る背景には、両社の本拠地であるフランスの自治体が歳出削減を強化する中で水道契約における企業の利益幅が削減されていることがある。また断片的な計量、水の盗難、そしてコストを下回る供給価格が企業からの搾取をさらに推し進めているとRousseau氏は指摘し、もし水道事業者らが発生するすべてのコストを水道料金に転嫁した場合、人々は水を買えなくなるだろうと語った。

インドにおける現在の売上の小ささは、大きな成長可能性の表れ

インドの経済規模はアジア第3位であるが、現在のところVeoliaとSuezのインドでの売上が占める割合は小さい。両社のインド国内での売上額と世界での総売上は下表のとおりである。また、近年の両社のインド国内での実績は下図の通りである。

表 VeoliaとSuezのインドおよび世界での売上

インド国内の売上(2014年) 全世界での売上(2014年)
Veolia 5000万ユーロ
(約67億円)
240億ユーロ
(約3兆2600億円)
Suez 9200万ユーロ
(約121億円)
140億ユーロ
(約1兆8800億円)

 

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図 VeoliaとSuezのインドでの最近の実績(赤:Veolia、緑:Suez)
(出典:各種資料よりEnviX作成)

しかし、投資会社IIFL Capital Ltd.のアナリストG. V. Giris氏は、市場規模が小さいということは、潜在的な成長の余地が大きいことの裏返しであると指摘する。また彼は、Modi首相がガンジス川の汚染抑制策を押し進めていることも、VeoliaやインドのVA Tech Wabag社、シンガポールのHyfluxにとっては朗報だと述べた。「より多くの企業が水の自給に投資せざるをなくなることでしょう。また、政府がガンジス川沿いの汚染企業を閉鎖すると発表したことで、水のリサイクルに対する産業界の需要は今後10年で増加することでしょう」と彼は語る。

なお、インドでの水需要量で最大を占めるのは農業セクターであるが、今後の増加率に関しては工業セクターが最も大きく、2050年には全水需要量の約18%を占めると予測されている(下図)。
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モディ首相の施策も手伝って伸びる廃水処理需要

VeoliaのRousseau氏はメディアのインタビューに対して、利幅の大きい高付加価値技術を活用した産業にフォーカスしていることを明かした。同社は現在、インドのカルナータカ州、マハーラーシュトラ州、デリー州に地方自治体の処理プラントを擁している。一方でSuezのインド国内ユニットCEOのShyam Bhan氏は、同社が現在ムンバイやチェンナイ、その他の都市で下水・海水淡水化の大規模施設の入札案件に参加することを計画していると明かした。コンサルタント会社によれば、インドは現在生じる廃水の3分の1しか処理する能力をもたない。廃水処理プラントの市場は2016年には21億USD(約2580億円)に到達するという(2013年には14億USD[1717億円])。

産業の成長を妨げる問題はやはり財政である。モディ首相は2015年度(~2016年3月)、水資源のために420億ルピー(約804億円)の予算を確保した。これは前年度1310億ルピー(約2490億円)から大きな削減となった。モディ首相のアジェンダには、ヒマラヤ地域の河川とインド半島の河川をつなぐという30年来の計画を復活させ、水が不足している地域に水を供給することが含まれている。世界資源研究所の試算によれば、インドでは半数以上の国民が水ストレスに直面しており、Rousseau氏は水の管理技術の国内市場は拡大すると予測する。「時間はかかりますが、自信をもっていえます。多くのインド人が国外の旅行をする中でインドの状況は受け入れられるものではないと気づいていくためです」

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