イスラエルとヨルダン、淡水化プラント建設や水の相互売買などで合意

イスラエルとヨルダンは2015年2月26日、淡水化による造水量の拡大、両国間の水の売買、水面積が縮小しつつある死海への塩水の供給などを内容とする合意文書を交わした。この合意文書は、2013年12月にワシントンDCの世界銀行本部で交わされた覚書をもとに最終決定したもので、ヨルダンで催された調印式では、米国大使館と世界銀行の代表の同席のもと、イスラエルのSilvan Shalomエネルギー・水資源大臣とヨルダンのHazim el-Naser水・灌漑大臣が署名した。この合意によるプロジェクトの規模はおよそ8億ドル(約960億円)と見積もられており、世界銀行などからの融資が予定されている。

合意のおもな内容

今回の最終合意のおもな内容は以下のとおりである。

  • 淡水化プラントの建設:
    アカバ湾最奥部沿岸のヨルダン領内に、年間5600万ないし8000万立方メートルの造水能力をもつ淡水化プラントを建設する。
  • 両国間の水の相互売買:
    イスラエルは、新設する淡水化プラントで得られる淡水のうち、3000万ないし5000万立方メートルを購入して同国南部で使用するが、その一方で、北部のガリラヤ湖の淡水を5000万立方メートル、ヨルダンに売却する。この淡水の価格は、淡水化プラントで得られる水と同等とする。ヨルダンに売却した分、イスラエルは地中海の水を淡水化しなければならないからである。
  • 死海に塩水を供給するパイプラインの建設:
    死海は両国にとって重要な観光資源であり、また鉱物資源でもある。その水面積の減少に対処するため、淡水化プラントの廃水であるブライン(濃縮海水)と海水を混ぜ、それを死海まで運ぶための180キロメートルのパイプラインを建設する。

このうち、淡水化プラントの建設工事はおよそ18ヵ月後にはじまる予定である。また、パイプラインやそれにともなうポンプ施設等の建設については、国際入札が年内にもはじまり、3年以内に発注がなされる見込みである。

合意が先送りされた事項など

2013年12月の覚書には、イスラエルがパレスチナ自治政府に対し、浄化した廃水を2000万立方メートル売却するという内容が盛り込まれていたが、今回の最終合意文書にはこれが書かれていない。これについては現在、別個に交渉中とのことである。また、ガリラヤ湖の淡水をヨルダンに移送する方法についても、現在まだ検討中で、最終合意書には書かれていない。