欧州議会環境委員会、水アクセス権を求める市民への十分な対応を欧州委員会に要求

手頃で清潔な水へのアクセスを基本的人権の一つと認める法案を出すよう欧州委員会に求める決議案が2015年6月25日、欧州議会の環境委員会を通過した(賛成38票、反対22票)。今後9月の本会議での票決が暫定的に予定されている(審議詳細は下記URL)。
http://www.europarl.europa.eu/oeil/popups/ficheprocedure.do?reference=2014/2239(INI)&l=en

決議案は、初の欧州市民イニシアチブ(ECI:European Citizens’ Initiative)となったRight2Waterへの回答として欧州委員会が2014年3月に出した方針書(COM(2014)0177)について、“既存の施策を確認するだけの弱い内容で、野心を欠き、ECI制度への信頼を損ねるもの”としている。そして、欧州委員会に対し、Right2Waterの要求に沿う法案を出すよう求め、必要なら水枠組み指令(2000/60/EC)や飲料水指令(98/83/EC)の改定も検討すべきとしている。この他、決議案は欧州委員会に次のような要求をしている。

  • 投資資金を欠く域内の公営水事業者が(特に貧困層への水・衛生サービスの提供を目的として)優遇金利でEU基金と長期融資を確実に利用できるようにする。
  • 水貧困(特にアクセスや価格面)に関するデータ不足への対応。
  • 全収入を水サービスの維持・改善と水資源保護に再投資するよう事業者に促す。
  • 域内市場関連規定の対象から水と公衆衛生を外す(水サービスの民営化に懸念)。

2012年4月に導入されたECIは、EU市民が欧州委員会に直接、立法を求める制度で、最低7カ国の7人のEU市民が発起人となり1年以内に100万人以上の署名を集めると受け付けられる。Right2Waterは、水と公衆衛生が人権の一部であることを認めるEU法を制定し、全市民への十分かつ清潔な飲料水と公衆衛生の提供をEU諸国に義務付け、市場自由化の対象から水供給事業を外すよう求めていた。

欧州委員会の報道官によると、欧州委員会はRight2Waterへの対応として飲料水指令の見直しを始め、2014年6~9月には飲料水の質や価格などについて一般市民や利害関係者から意見を公募し、その分析結果を2015年5月の関係者会合で披露したという。また水枠組み指令については遅くとも2019年までに見直しを行う可能性があるという。