タイDIW、既存の規制を緩和する新たな工業排水管理政策を検討

タイ工業省・工業事業局(DIW)は現在、工業排水管理の改廃を検討している。具体的にDIWは、2008年に公布された工業省告示「仏暦2551年(2008年)チャオプラヤ川の保全に向けた工業排水管理措置」(以下、「2008年告示」)を廃止し、新たに、より柔軟な排水管理政策を導入することを目指している。

2008年以降続くチャオプラヤ川への工場排水の放出制限――規制緩和を望む声高まる

上記2008年告示は、9つの県(ナコンサワン県、チャイナート県、シンブリ県、アントン県、アユタヤ県、パトゥムターニー県、ノンタブリー県、サムットプラーカーン県、およびバンコク都)を対象として、以下の規制を定めるものである。

  • Ÿ新設工場:チャオプラヤ川に工業排水を放出することを禁止する
  • Ÿ既設工場:チャオプラヤ川に放出する工業排水の量を増加させることを禁止する

現在、この2008年告示を理由として、工場の拡張を望みつつも実行できずにいる工場が100以上存在すると見られており、この規制を緩和することでこれらの地域における工場建設の柔軟性が高まると期待されている。具体的にDIWでは現在、国の自治委員会との間で、2008年告示を廃止し、新たに5県・5業種を対象とする工業排水管理措置を導入するよう交渉を続けているという。DIWのMonkol Pruekwatana次長によれば、この新たな政策が施行されれば、工業省は工場の建設に適さない地域、特別な要件を付す地域を指定することができるようになるという。

工場の検査を進めるDIW、来年の検査重点分野は5県・5産業

DIWのPasu Loharjun局長によれば、DIWはタイで工業排水を出している3万4320箇所の工場のうち、2015年に9768箇所を検査することを計画しており、このうちの60%を2015年1月から6月の間に完了した。その結果、食品・飲料、繊維、染色産業に属する151の工場が検査に合格せず、「仏暦2535年(1992年)工場法」の規定により最高20万バーツ(約72万5000円)の罰金および2年間の懲役の少なくともいずれか一方を課されることとなった。

DIWはまた、2016年における検査の重点を、現在検討中の新たな工業排水管理措置の対象となる5県/5業種に置くとしている。具体的には、工業排水の量で上位5つの県(サムットプラーカーン県、サムットサコーン県、アユタヤ県、ラヨーン県、ナコーンパトム県、下表参照)および5種類の工場または施設(中央排水処理施設、染色産業、パルプ・製紙産業、合成ゴム産業、および食肉加工産業)とすることを発表した。

表:工業排水の量が多い上位5県

 No. 工業排水を出す
工場の数
工場排水の量(m3/日)
 1 サムットプラーカーン県 420 9万8325
 2 サムットサコーン県 203 8万4060
 3 アユタヤ県 82 7万1905
 4 ラヨーン県 67 6万3298
 5 ナコーンパトム県 152 5万9815