スイス、多岐浸入源から排出された微量水質汚染物質による河川汚濁状況を調査

スイス連邦環境庁は2015年9月9日、河川汚濁に関する報告書『多岐浸入源から河川に流入する微量(マイクロ)水質汚染物質』*1を発表した。微量水質汚染物質による広域水質汚濁は、スイスの多くの河川で、特定の水生生物にとって有害なほどひどくなっている。

報告書では、次の3点を調査分析した。

(1) 最も重要な排出源(汚染の原因者)と浸入経路(河川に達する経路)に関する専門家の知見を整理する。
(2) 最も人口密度の高い地域(ミッテルラント、ジュラ、タレベネン)の河川の流れに沿って、土地利用状況を分析する。
(3) 微量水質汚染物質に関する測定データを収集し評価する。

スイスでは微量水質汚染物質の大部分は、下水処理施設での処理を経て河川に流れ込んでいる。同国では、2014年3月の河川保全法改正により、最重点の下水処理施設をアップグレードする財源を確保できた(2016年初めに施行予定)。これにより、下水処理施設から排出される微量汚染物質による河川汚濁は、半減される見込みである。

一方、今回の報告書では、下水処理施設以外の多種多様な汚濁源、いわゆる「多岐浸入源(defuse entries)」から河川に流れ込んでいる微量水質汚染物質の重要性を初めて包括的に分析した。農業、住宅地、交通の分野から、農薬、殺生物性製品、洗剤、ボディケア用品、医薬品、重金属などの微量水質汚染物質が、多岐浸入源を通じて河川に入り込んでいる。とくに中小の河川で、水生生物を害するおそれのあるピーク濃度に達している。微量水質汚染物質の多岐浸入源は著しく変動しており、降雨時に発生することが多い。そのピーク濃度は、集中的な土地利用を伴う地域を流れる中小の河川流域でとくに現れている。まさに小川は生態系上大きな意味をもち、スイスの全河川網の約75%を占めている。

報告書では、微量水質汚染物質の最も重要な発生源も調査した。最も多いのは農業であり、それよりわずかに少ないのが住宅地である。また、最も重要な物質は農薬(殺虫剤、除草剤、殺真菌剤)と、数種の殺生物性製品(家庭用、農業用)、重金属(亜鉛、銅)である。

報告書では、河川状態のモニタリングをあらためて強化するとともに、小川にも立ち入って調査すべきである、と結論している。また水質汚濁を大幅に減らすには、農業を中心に、発生源に対しさまざまな対策を講じなければならない。スイス連邦農務庁が中心となって現在、農薬のリスク低減と持続可能な利用に関する行動計画を作成しているところである。

*1 http://www.bafu.admin.ch/publikationen/publikation/01819/index.html?lang=de

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