ドイツの第1期水域管理計画、地表水域の10%足らずでしか目標を達成できず

ドイツ連邦環境庁が2016年9月、EU水枠組み指令に基づく同国の第1期水域管理計画の実施に伴う成果報告書[1]を発行した。EU水枠組み指令では、EU加盟国の河川域、海洋域、汽水域(淡水と海水が混在)、沿岸海域、地下水域の水質を、遅くとも2027年までに「良好な状態」に引き上げる、との目標を設定している。この目標を達成するため、EUは加盟各国に、3期にわたる6カ年水域管理計画を策定させ提出させている。

本報告書は、そのうちドイツの第1期水域管理計画(2009~15年)の成果をまとめるとともに、あわせて第2期計画(2016~21年)への展望を示したものである。ドイツの第1期水域管理計画の成果は次のとおりであった。

  • 水枠組み指令に基づくドイツの水域管理計画の目標は、地表水(河川域、海洋域、汽水域、沿岸域)のわずか10%足らずでしか達成されなかった。すなわち、ドイツの地表水水塊の生態系状態は、「非常に良い」が3%、「良い」が7.9%(以上合わせて8.2%)、「普通」が36.1%、「不十分」が33.8%、「悪い」が19.2%、「評価なし」が2.7%であった。目標を達成できなかった原因の大半は、ドイツの水域構造が不完全な点にある。具体的には、自然に近い動植物生息域の不足や、砂防ダムによる水流阻害が原因である。また、農業や下水浄化施設からの冨栄養物質の流入もその原因となっている。なお、前回2009年と比べ今回、「普通」の評価が増えた(前回「不十分」や「悪い」の評価を付けられた水域の多くが「普通」に格上げされた)。

図 ドイツの地表水水塊の生態系状態の内訳
(出典:ドイツ第1期水域管理計画の実施に伴う成果報告書)

  • ドイツの地表水水塊の化学的状態については、広範にわたって表面に現れる有害物質(たとえば水銀や、燃焼により発生する多環芳香族炭化水素(PAH))を考慮する場合、ドイツ全土の水域で基準を上回り、「良くない」が100%を占めた。
  • ドイツの地下水の水量状態は、「良い」が7%、「悪い」が4.3%であった。一方、地下水の化学的状態は、「良い」が63.7%、「悪い」が36%であった。
  • ドイツの水域の大部分(地表水の82%、地下水の36%)に関して、2015年末になっても目標が達成されないことが予想されたため、目標達成期限の延期や例外扱いが必要になった。目標未達事案が多すぎて、すべての水域で同時に対策を講じることはできなかった。そのため、目標達成期限を2015年以降に先送りすることが優先された。
  • ドイツの第2期水域管理計画で講じる予定の地表水対策の内訳は、排水調節と水域形態変更が5%、農業等の面源対策が38%、自治体の下水処理施設や排水路修復等の点源対策が19%、そして取水対策が1.5%である。

[1] https://www.umweltbundesamt.de/sites/default/files/medien/1968/publikationen/final_broschure_wasserrahm_enrichtlinie_bf_112116.pdf