スイス、河川水域の水温上限に例外を認める河川水域保全令改正案を公開協議へ

スイス環境省が2017年4月13日、河川水域の法定水温上限に例外を認める河川水域保全令改正案を公開協議に付した(以下のURLから、政令案と趣旨説明書の原文をダウンロード可)。
https://www.bafu.admin.ch/bafu/de/home/themen/wasser/recht/vernehmlassungen.html

環境省によると、水温は地表水域に生息する水生生物の生命や繁殖にとって決定的に最も重要なパラメータである。水温が高いと、病気がまん延しやすい。それだけでなく、酸素が溶解しにくい状況で生命活動を一般に高めることから、ストレス状況に生物を追いやるおそれがある。種により異なるとはいえ、ある一定の温度を超えると、その水温は水生生物にとって有害で、むしろ致命的でさえある。工場や発電所など人為的な温排水による影響により、このような状況がすでに出現している。2003年夏には、ボーデン湖下流のライン川の水温が高くなり、カワヒメマスの大量死を招いた。したがって、環境省によると、温排水による河川水域の高温化をできる限り小さく留めることが重要である。

スイスの現行の1998年10月28日の河川水域保全令では次の要求事項を定めている。

(1) 河川水域の水温を、最も影響の小さい状態との比較で最大3℃まで変更してよい。

(2) その際、河川水域の水温は25℃を越えてはならない。

(3) 河川水域に排出する冷却水の水温は30℃を越えてはならない。ただし、夏場に、短期かつ軽微な範囲で超過することは認める。

(4) 以上の要求事項を確実に遵守するため、温排水を含む、汚染された下水を河川水域に排出する場合には、所管官庁の許可を取得する必要がある。この許可は、排水に対する要求条件が遵守される場合にのみ発給する。

 

今回、河川水域保全令を次のように改正して例外規定を設ける。

(1) 温排水が水温に対しごくわずかな影響しか及ぼさないとき、しかもBAT(利用可能な最高水準の技術)を運用してもその温排水が避けられない場合には、水温が25℃を超える場合であってもその温排水を認める。循環冷却設備を有する新たな施設を設置する場合には、あらゆる努力を尽くして温排水を最少化するとともに、他の方法では利用できない温排水だけを河川水域に排出するようにしなければならない。

(2) 河川流域に排出する冷却水の温度を30℃以下とする制限は、急激な局所的高温化を防ぐためにある。すでに現在でも、夏場には例外を認めている。今回さらに例外を認める。すなわち、循環冷却設備のエネルギー効率が高い場合、河川水域に追加の負荷を与えない限り、冷却用水の放水口温度が通常より高くても温排水を認める。

(3) 原子力発電所の場合、温排水量が膨大であり、水温が25℃を越えないという現行基準を守れない。したがって、以上のような例外を認める。

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