中国、水質・土壌汚染対策の強化は2017年重点活動任務の1つ

2017年3月5日に中国北京で開催された第12期全国人民代表大会第5回会議で、李克強総理は、国務院の代表として同大会で政府活動報告を行った。李総理は、2016年の活動を回顧した上で、2017年の重点活動任務について下記のように語った。

2017年には、「3つの解消、1つの低減、1つの補強(過剰生産能力・不動産在庫・レバレッジの削減、コストの引き下げ、脆弱産業分野の支援)」の改革による徹底的な推進、生態環境保護対策など9つの分野での活動を強化する。

項目 詳細
過剰生産能力の着実かつ効果的な解消 環境保護、エネルギー消費、品質、安全などの関連法律・法規および基準を厳格に実施し、市場化や法治化手段をより一層活用して、「ゾンビ企業」を効果的に整理する。企業の合併・再編や破産清算を促し、基準に到達していない旧式生産能力を断固として廃棄して、生産能力過剰業種における新規生産能力の追加を厳格に規制する必要がある。
エコ文明体制改革の深化 主体機能区制度[1]や生態補償(生態環境保全のための減収補償)の枠組みを整備し、資源や環境のモニタリングおよび早期警報システムを確立して、国家自然資源資産管理体制の整備を試験的に進め、国立公園制の基本計画を打ち出し、エコ文明建設を制度面から保障していく。
生態環境保護・対策の強化 生態環境、とりわけ大気質の早急な改善を図ることは、国民の切実な願いであり、持続可能な発展における内在的要求でもある。合理的に政策を実施し、根本的問題と表面に表れた問題のいずれも解決を図り、強力な手段を講じて対策に取り組み、国民が納得のいく結果を出さなければならない。
青空を守る戦いへの勝利 2017年、二酸化硫黄および窒素酸化物の排出量をそれぞれ3%削減し、重点地域の微小粒子状物質(PM2.5)については、その濃度を顕著に低下させる。

1. 石炭燃焼による汚染問題の早急な解決。

2. 汚染源対策の全面的な推進。

重点業種汚染対策特別活動を実施し、すべての重点工業汚染源に対して24時間のオンライン監視を行う。排出基準を達成していない企業の最終的な達成期限を明確にし、期限内に達成できなかった場合には、法に基づき操業停止処分を断行する。

3. 自動車排気ガス対策の強化。

高排出ガス車に対する特別対策を実施し、クリーンエネルギー車の利用を奨励する。重点地域で、国6基準[2]に適合したガソリンの使用普及を加速する。

4. 重度汚染天気への効果的な対応。

スモッグ発生メカニズムの研究を強化し、対応策の科学性および的確性の向上を図る。重点地域間共同対策の範囲を拡大し、緊急措置を強化する。

5. 環境分野での取締りおよび監督・検査・責任追及の厳格化。

汚染物質の不法排出や、データ偽造に対する厳しい取締りを実施する。取締りが不十分で、違法行為を見逃し黙認している場合には、厳しく責任を追及しなければならない。大気質の悪化に対する対策が不十分な場合にも、厳しく責任を追及する。

水質・土壌汚染対策の強化 2017年には、化学的酸素要求量(COD)およびアンモニア性窒素の排出量をそれぞれ2%削減する。重点流域・区域の水汚染対策、および農業における非点源汚染対策への取り組みを強化する。土壌汚染状況を詳しく調査し、分類ごとに対策措置を制定し実施する。都市・農村の環境総合対策を強化し、ゴミの分別処理制度の普及を図る。省エネ・環境保護産業の発展を促し、環境改善と経済発展のウィン・ウィン(Win-Win)を実現する。
生態系の保護と整備の推進 生態系保護レッドラインの画定を迅速に実施するとともに、同レッドラインを厳守する。森林の質的向上プロジェクト、長江経済ベルト重要生態系修復プロジェクト、第2次山・川・林・田・湖の生態系保護プロジェクトの試行を開始し、80万ヘクタール以上の不適耕地の再森林化および草地回復を完了する。生態系という財産を積み重ねて、持続的な発展が可能な緑の長城を構築していく。

 

なお、李克強総理の「政府活動報告(全文)」の原文は、下記のURLにて閲覧可能である(中国語:簡体字)。
http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/2017-03/15/content_2018934.htm

[1] 各地域の資源環境の受容能力、開発力、発展の潜在力に合わせて、人口分布、経済構成、国土利用と都市化構造を統一的に計画した上で、各地域の主体機能を決定する。さらに、同機能に基づき開発方向と政策を明確にし、主体機能区の形成を進める計画。

[2]中国の自動車排出ガス規制値と測定方法の第6段階で、ユーロ6に相当。

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