タイ、国内の環境汚染状況と今後の管理方針についてまとめた資料を公開

タイ天然資源環境省・公害管理局(PCD)は、2018年1月11日、「2017年(仏暦2560年)のタイの汚染状況」と題した資料を公開した。本資料は水、大気、廃棄物・ゴミについての国内での管理の現状、課題、今後の方針についてまとめたもので、以下のURLよりダウンロード可能である。

http://infofile.pcd.go.th/pcd/ppt._pressrelease_2017.pdf?CFID=3275602&CFTOKEN=10635147

以下では、水の汚染状況についてまとめる。

河川と海水の汚染状況

2017年、タイにある59の主要河川の水質は改善に向かっていることが分かった。水質はまずまず良い状態にあり、悪化が軽減されてきており、極端に悪化している水源はない。なお、昨年同様南部の水源の水質は他の地方よりも良く、東北部がそれに続き、中央部の水源の水質が最も悪化している(下図)。水質が良好である水源の上位5つを挙げると、第1位はターピー川上流域で、以下タコーン運河上流域、チー、ソンクラーム、サーイブリー運河と続く。一方で下位5つの水源を見ると、チャオプラヤー川下流域、ターチーン川下流域、パンラート川上流域、ラヨーン川下流域、クアン川の順に水質が悪化している。これらの河川は住宅地域、工業、農業、畜産業が営まれている地域を流れており、廃水処理システムがなく、まだ十分に廃水管理がなされていないためである。河川の水質汚染の事例としては、2017年10月1日に、スパンブリー県のThai Agro Energy Public Company Limitedの工場で蒸留廃液の貯留槽が損壊する事故があり、廃水が家屋を浸しターチーン川に流れ込んだ。この廃水の水質は工場排水基準を満たしていなかったため、フアイカチー、クラシヤオの水路、及びターチーン川の水質がかなり悪化した。これを受けてスパンブリー県は、同社の全面的な操業停止および45日以内の廃水処理槽の修繕、工場が全補償責任を負うことによる影響の修復、住民の支援を命じた。

図 タイの河川の汚染状況
(出典:「2017年(仏暦2560年)のタイの汚染状況」よりエンヴィックス作成)

次に、海水の水質は改善に向かっており、まずまず良い水質の海水域が増えている。また水質が極端に悪化している海水域が減っていることも分かった。これは海岸地域で様々な管理活動が行われ、陸上の汚染源からの汚染を防いでいるためで、そのために海水の水質が改善されている。水質の良い海水域の順に挙げると、チュムポーン県のサプリー湾及びトゥンウアレン湾、クラビー県ピピ島のウォーク海及びハートトンサイ海、及びチョンブリー県のセームサーン水路になる。一方で水質の悪い海水域は、順にサムットプラーカーン県の12タンワー運河の河口、及び35km地点の染色工場の正面、スラートターニー県のターカァーイ運河の河口、サムットプラーカーン県のチャオプラヤー川の河口、及びサムットサーコーン県のターチーン川の河口になる。これらの海域はコミュニティ、工業、農業、水生動物の養殖業に由来する廃水が流れ着く位置にあることがその理由である。

今後の方針

廃水処理について、発生源における廃水の量を管理し、汚濁度を軽減し、事業所の設立から許可証の更新、及び操業段階に至るまでを対象として廃水処理を考慮する。許可命令を出す、または許可証を更新する場合は、発生源による汚染の管理基準を基に条件または規則を定め、事業者にこれを順守させる必要がある。汚染排出許可システムにより廃水の排出を管理する必要があり、特に水辺に存在する人口稠密な各都市部のコミュニティに共同廃水処理システムを設け、準備の整っていない地域でのコミュニティの廃水処理システムの管理方式を見直し、廃水処理システムを革新して、電気や水道と同じく公的部門の公共事業システムに統合する必要がある。