GreenCape、南ア・ウエスタンケープ州における水セクタへの投資機会を分析

南アフリカ・ウエスタンケープ州に拠点を構える非営利団体GreenCapeは2018年3月下旬、同州を始めとする南アフリカ都市部における水セクタへの投資機会を分析した報告書“2018 Water Sector Market Intelligence Report[1]”を発表した。ウエスタンケープ州では近年、干ばつによる水不足に伴う給水制限などが実施されており、これが企業の事業活動等に影響を及ぼしている。そのため、干ばつや長期的な渇水などを解決する新たな技術やサービスの導入促進を図るために、同州における水セクタへの投資機会となる技術やサービスを特定した。

GreenCapeは、ウエスタンケープ州とその中心都市であるケープタウンの観光貿易投資促進庁であるWesgroと最近協議の場を設け、同州が近年抱える水問題を、地域経済の発展や雇用創出の機会として捉える取り組みについて議論が行われた。ケースタウン市当局、ウエスタンケープ州政府を始め、水セクタの関連企業や各国領事館の代表者、学術機関の関係者等も協議に参加し、水セクタにおけるレジリエンシー(強靱力)の強化やそれを達成する目標等が議論された。

ウエスタンケープ州では、干ばつの影響により水供給源の確保が困難となっている。その結果、水の安定供給へのリスクが高まりつつあるほか、企業による事業活動の停止、経済損失などを引き起こしている。さらに、州内では給水制限が益々厳格化される傾向にあり、水需要の削減に対するプレッシャーが地域住民や企業の間で高まりつつある。また地方自治体は、水供給源を迅速に確保するための緊急増強措置を実施しているほか、長期的な干ばつ対策を目的とした水供給計画を再評価するなどの対策を講じている。このような水問題を解決するため、“2018 Water Sector Market Intelligence Report”では、水の計測と測定、水の効率化、再生水の利用、代替となる水供給源の利活用、といった4つの分野において、新規技術やサービスの導入ニーズがあり、投資機会があると位置づけられた。

 

水の計測と測定

干ばつなどの状況下において水管理を改善するツールとして、民間セクタを対象としたスマート水計測システムの導入ニーズが拡大しつつある。スマートメーターの設置を通じて、ユーザーや地方自治体との通信が可能となり、ユーザーの水消費パターンの測定、プリペイド式での水道サービスの提供、漏水の検知と通知、水流の遠隔制御などが可能となる。さらに、地下水や雨水捕集といった分散型水資源を利活用するために、これらの水質を迅速且つ効率的に測定するサービスのニーズも増えている。そのため、これらのサービスを提供するプロバイダに対する市場機会が拡大している。

水の効率化

南アフリカ都市圏にて水損失量を減らすために水保全・水需要管理(Water Conservation and Water Demand Management:WCWDM)プロジェクトが実施される。同プロジェクトコストは年間20億ランド(約179億500万円)に達することが見込まれている。同プロジェクトの実施は、漏水削減システムの設計や漏水を制御するコンポーネントの製造、組立、設置を行う事業者にとり投資機会となる。しかし、プロジェクトコストのうち5億ランド(約44億7600万円)については現在、財源確保の見通しがたたず資金が不足している状況にある。

再生水の利用

産業セクタを対象とした再生水と地方自治体が運営する下水処理場で処理された再生水の利用が注目されつつある。産業セクタを対象とした再生水の部門では、ZLDZero Liquid Discharge)技術の導入拡大などが挙げられることから、同技術を開発するベンダやサービスプロバイダにとり市場機会がある。ウエスタンケープ州では2016年単年、農業部門を除いて、水消費量が多いまたは比較的多いセクタ全体の総価値額は1550億ランド(約1兆3876億1900万円)に達している。一方、地方自治体が運営する下水処理場で処理された再生水の部門では、ケープタウンにおける下水処理施設での再生水の利用に約20億ランド(約179億500万円)に達する潜在市場があると見られている。

代替となる水供給源の利活用

南アフリカでは、地下水や雨水捕集、海水淡水化など、水供給の代替資源への関心が高まりつつある。同国では現在、地下水の利用が限定的であるため、将来の新たな水供給源として地下水の活用に多大な潜在的機会がある。またウエスタンケープ州では冬季(雨季)に一定の降雨があるものの、貯水池の整備が行き届いていないため、夏季(乾季)における雨水の利用が乏しい。そのため、雨水捕集システムへのニーズは大きく、特にトイレや洗濯などの屋内の水利用を目的とした、コスト効率性が高い雨水捕集システムの設計、建設、製造、設置、維持といった市場ニーズがある。さらに、海岸沿いに位置する住宅または商工業施設の大規模開発を対象として海水淡水化技術のニーズもある。

[1] http://www.bizcommunity.com/f/1803/2018_Water_Sector_Market_Intelligence_Report.pdf

タグ「, , , 」の記事:

2020年3月24日
米EPA、水資源の持続可能性確保などを目的とした水再利用の国家行動計画を発表
2020年3月5日
中国の水ビジネスとIT技術の応用
2019年12月23日
El Paso Water、下水処理水の飲用再利用を目的とした施設の設計完了に向けて補助金を獲得
2019年12月22日
スペインの灌漑協会、世界の食糧問題には、再生水を利用した灌漑を推進すべきとの見解
2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル