スイス連邦環境省、今後の地下水汚染を懸念

スイス連邦環境省(FOEN:Federal Office for the Environment)は2019年8月15日、水質調査報告書を公表し、農業が盛んな地域では地下水への汚染が深刻化しつつあると結論付けた。同報告書では、現時点で地下水の水質は飲料水として安全な水準にあるものの、地下水の安全性を今後も維持するには多様な措置を講ずるべきであると提言している。

今回発表された水質調査報告書は、2006年から2017年までの間にスイス国内の合計600カ所地点で実施された水質検査の分析に基づいている。これらの水質検査の15%の地点で、肥料から放出される硝酸塩の水準が規制値である25mg/lを超えていた(2014年時点)。特に、耕作地が多い地域では40%の地点で規制値を上回った。しかし、飲料水の安全基準値を超えたケースは全体の2~4%に留まっている。また、農薬の濃度が基準値を超えた地点は全体のわずか2%程度である。更に使用禁止の除草剤が微量検出された地点もあり、農業従事者が使用を停止した後でも、生態系へ残存するため長期的な影響があるとされている。

水質汚染は、農業セクタに留まる問題ではない。稼働停止した産業施設や埋立地から排出される微小の汚染物質も懸念されている。2014年には水質検査の4%の地点で、揮発性ハロゲン化炭化水素が検出された。重要な飲料水源に対する懸念を抑え、汚染を確実に低下させるには、より総体的に地下水を保護することが必要であると、同報告書は指摘している。具体的な対策として、地下水汚染につながる農業活動の低減、更なる排水処理施設の整備、汚染土壌の浄化に対する取組み強化などが掲げられている。

スイスの飲料水源のうち80%程度が地下水にて賄われている。気候変動の影響が懸念されているものの、水供給ニーズを満たす上で利用可能な地下水が十分に確保されている。しかし、農業、産業、一般家庭といった各分野から地下水を水源として使用するニーズが継続的に高まりつつある。スイスでは来年、「クリーンな飲料水と健康食(For clean drinking and health food)」と称したイニシアティブの実施に向けた住民投票が開催される予定である。

スイスでは、人口が増加しているにもかかわらず、飲料水消費量が1980年代中盤以降、着実に減少しつつある。その理由として、節水技術の普及や水道配水網における漏水の削減、多様な産業における製造拠点の海外移転などが挙げられる。同国では現在、人口1人当たりの水消費量は1日当たり平均142リットルである。一般家庭において水消費量が最も多いのがトイレの水使用であり、全体の約3分の1を占めている。