水資源管理に関するCDPの調査、トヨタなど8社に最高評価

グローバル企業を対象に水資源管理の改善に関しておこなわれた調査で、アサヒグループホールディングス、Colgate Palmolive、Ford Motor Company、トヨタ自動車など8社が、最高評価のAにランクされた。この調査は国際非営利団体CDPが実施したもので、2015年10月22日に公表された調査報告書には、この種のものとしては初の、企業の水スチュワードシップの世界ランキングが示されている。CDPは投資家のためのサービスの一環として、企業の水管理に関する公開情報を集めており、他に類を見ない包括的なデータセットを保有している。

世界経済フォーラムが2015年の報告書で、水不足、洪水のリスクの増加、水質悪化などの水危機を、その影響という観点から向こう10年間に世界が直面する最大の脅威に位置づけているが、その同じ年に公表されたCDPのこの調査報告書、Accelerating action: CDP Global Water Report 2015(いますぐ行動を:CDP世界水報告2015)は、企業のなかには水問題への本格的取組を他に先んじてはじめているところもあることを示している。

CDPのWater Aリスト

このCDPの調査の結果、最高評価をあらわすWater Aリストに以下の4業種の8社がランクインした。Water A評価は、水資源の持続可能な管理へ向かう道で先頭を走る企業にあたえられる。これら企業は、水リスク緩和のための行動をすでに起こしており、また、水リスクが自社におよぼす影響を減らすばかりでなく、さらに重要なこととして、環境や他の水利用者にとっての水セキュリティを向上させる方向でビジネスを展開している。

  • Ÿ  Ford Motor Company (米国;一般消費材)
  • Ÿ  Toyota Motor Corporation (日本;一般消費材)
  • Ÿ  Asahi Group Holdings, Ltd (日本;生活必需品)
  • Ÿ  Colgate Palmolive Company(米国;生活必需品)
  • Ÿ  Rohm Co., Ltd. (日本;情報技術)
  • Ÿ  Harmony Gold Mining Co Ltd(南アフリカ;資源)
  • Ÿ  Kumba Iron Ore(南アフリカ;資源)
  • Ÿ  Metsä Board(フィンランド;資源)

機関投資家のあいだで高まる関心

水関連のリスク、ビジネス・チャンス、それに情報の公開への関心が機関投資家のあいだで高まってきており、CDPが2010年にこの調査をはじめて以来、調査に協力する機関投資家の数は4倍に増えた。今回の調査では、さまざまな業種の世界の大手上場企業のうち、水の問題で脆弱性をかかえていたり他への影響が大きかったりする1073社に対して、悪化をつづける水のセキュリティにどのように適応し、対応しているかを問うアンケートが実施されたが、そのアンケートの質問者として617の機関投資家が名を連ねた。アンケートには405社が回答した。これは2014年の回答企業の2倍以上である。CDPの今回の調査報告書は、この405社の回答内容を分析したものである。

独立系資産運用会社Neuberger BermanのSRI/コア・エクィティ部門でポートフォリオを管理する幹部のひとり、Ingrid Dyottは、つぎのように述べている。「水関連のデータに目を向けることにより、その会社の質がある程度わかる。投資のリスクのひとつに、投資先の実態がわからないということがある。CDPの提供する情報を通じて水問題を見ていくことにより、投資家はそこに投資することの意味をより深く知ることができる。だから、水に関係する業界の企業にとっては、CDPに情報を開示することが決定的に重要になる」

先進的企業とそうでない企業とのギャップ

Water Aリストにランクインした企業のように、水問題への取組が進んでいることをうかがわせる例がある一方で、そうした企業と、投資家がますます懸念を強めているその他の企業とのあいだにギャップがあることも否めない。カリフォルニアや、ブラジルの一部の水不足に見られるように水危機が進行しているにもかかわらず、半数以上(53%)の企業が、水問題に弾力的に対応するための基本的な第一歩となる総合的なリスク評価を実施していないのである。

石油・ガス業界には特に、透明性や行動を求める投資家の声に耳を貸さない企業が多い。投資家らからの要請に応じて2015年の水管理戦略の説明を求めるCDPの今回のアンケートに、エネルギー部門の世界の大手上場企業のうちで回答を寄せてきたのは4分の1にも満たない22%にすぎなかった。これは、今回の平均回答率の38%を大きく下回っている。こうした透明性の欠如は、回答を寄せた石油・ガス企業のおよそ3分の2(65%)が水リスクに関して自社がかなり脆弱であると答えていることからも、懸念すべき事態といえる。また、これら企業のおよそ半数(43%)が、すでに前年から水関連の問題によって収益に影響が出はじめていると答えている。これは、今回のアンケートが対象とした8業種のなかでも最高の比率で、全体の平均、27%を大きく上回っている。

今回の調査結果について、CDPの水部門を統括するCate Lambはこう述べている。「20世紀における石油とちょうど同じように、水は急速に、21世紀を特徴づける資源になりつつある。しかし、あいにくなことに、石油とちがって水にはそれに代わるべきものがない。CDPの水プログラムを利用している企業は、水の管理に戦略的に取り組むことが、競争力、投資家への訴求力、それに企業のレジリエンスの強化につながることを理解しはじめている。とりわけ、CDPのWater Aリストにはいった企業は、より注意深いアプローチで水を管理していくことが、けっきょくは企業、それにもっと広い意味でのステークホルダーの利益になることを理解している。いまこそ、ギャップを埋めるときだ」