ベトナムのダナン、適正な廃水処理の実現にむけてPPPを視野に入れる

2016年10月15日に報じられたところによると、ベトナムのダナン市は適切な排水処理を実現し、「グリーン」な都市を構築するためにPPPによる資金調達を視野に入れているという。これは、都市部の水問題を議論するワークショップにおいて、市の経済社会開発当局の職員Quach Thi Xuan氏が語ったものである。ダナン市では、深刻な環境汚染に対応する一方で、工業地帯と都市部から出る廃水の処理、ならびに浄水の提供に頭を悩ませている。

廃水処理能力の不足による深刻な水質汚染

ダナン市では、工業地帯から出る廃水のうち、環境に放出される前に処理されるものは70%にすぎず、それも有機物の除去をしているにすぎない。雨水と未処理の家庭排水は、同一の下水管により回収される一方で、処理されていない都市下水が毎日市内28の湖(市に存在する湖の総数は30)に直接放出されている。Xuan氏によれば、ここ数年間で最も深刻な汚染を抱えている地域はソントラ地区のTho Quang 漁港であるという。漁船が1万9000回停泊し、23のシーフード加工工場と11の造船工場が存在するTho Quang 漁港では、排水処理能力が追いついていない。ダナン市の天然資源環境部署が最近発行した報告書によれば、これらの漁船とシーフード加工工場から、未処理の廃棄物と廃水が漁港に直接投棄されているという(それぞれ75 m3および500 m3)。一方で、このエリアに2カ所存在する下水処理施設の処理能力は2000 m3日である。タンケ地区の湖や河川において大量の魚が死亡し、住宅地において悪臭が漂う理由が工業地帯から発生する処理(嫌気処理)の足りない廃水であるとして、批難が集まっている。あわせて、家庭やシーフードレストランから排出される廃水が処理されないまま放出され、ソントラ地区の海岸を汚染している。

浄水の供給能力も限界に達する――数年以内に水不足の危機に

ダナン市はまた、同市が今後数年以内に水不足の危機に直面すると懸念を表明している。2015年にヴギア川から採取した水の量は20万m3 であるが、水の需要がこの量にほぼ等しくなっているためである。ダナン市の浄水の大部分を供給しているCau Do水処理場では、しばしば原水の高い塩分濃度に悩まされているが、これは、乾季の間、河川の上流で充分な水を採取できないことが原因である。2015年にはその塩分濃度は13.568 mg/リットルに達した。これは通常の塩分濃度の63倍である。一方で、クアンナム省のヴギア川上流では6つの大規模水力発電所が稼働しており、発電に充分な水量を確保している。これがダナン市に流入する河川の水量が減少している原因であるという。Xuan氏は、こうした水資源管理の危機が起こった原因について、河川を流れる表面水の管理と廃水処理、森林保護においてダナン市とクアンナム省が連携できていないことだと指摘する。

 

上下水施設の整備と「グリーン」な都市の実現のため、PPPによる資金調達を目指す

市当局の副議長を務めるNguyen Ngoc Tuan氏は、ダナン市の廃水処理および浄水の供給のため、またダナンを「グリーン」な都市にする上では、官民パートナーシップ(PPP)の投資プロジェクトが必要だと述べる。必要な資金は総額で2 6700USD(約275億円)であり、このうち2億1800万USD(約225億円)は2025年までに「グリーン」な都市を実現するとの目標に向けたインフラ整備にあてられるという。ダナン市は、必要な資金の41%を民間部門から引き出したいと考えている。しかし、建設省の専門家によれば、廃水処理にかかるコストは浄水の10%にまで達しており、その価格は民間の投資家にとって魅力的なものとなっていないという。Tuan氏は、PPPは非常に新しい投資モデルであり、国内の投資家は19のPPPプロジェクト(資金総額7億6800万USD:約791億円)への参加をためらっていると指摘する。

日本のJICAは、2012年以降、ダナン市のホアリエン給水場およびカンソン廃水処理場における実現可能性調査(PFS)に支援を提供しており、またダナン市の民間企業がPPPプロジェクトにおけるスキルと管理能力を向上させるための支援を続けている。2013年、世界銀行は都市持続可能性開発プロジェクトに2億7200万USD(約280億円)の融資を行うことに合意した。このうち2億240万USD(約231億円)は世界銀行が供給するという。2015年、ダナン市は1億1500万USD(約119億円)の予算案を提示した。このうち1億USD(約103億円)は、廃水処理場、排水管を含めた廃水処理システムの改修のため、世界銀行から供給されるという。

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